第6話 いや、正当防衛ですよね?
サイドステップで避けて…おもっきり振り下ろす!
振り下ろした剣は男の脳天に刺さり、男は数秒後に白目になり絶命した。
肇にとって初めての戦闘であり初めて人を殺めた瞬間でもあった。
はぁはぁはぁ。人を…人を殺した。
俺がやった。手に感触が残っている。
胃が一気に締め付けられ、先ほど食べたリンゴが込み上げる。 かろうじて吐く事は留まったが意識が混乱している。
(深呼吸だ、落ち着かなきゃ。大丈夫だ。
相手はどう見えても悪い奴らだ。正当防衛だろ。気をしっかり持て!)
ふぅふぅ、ふぅー。大丈夫だ。
ほんの数秒だったが、肇は大きな隙を作ってしまった。しかし、男たちはその隙を活かせなかった。
リーダーの男視点
(なんだ?ただの優男だと思ったら、すげぇ剣の使い手か?)
リーダーの男は、その見た目からの自分の判断の誤りがあるか慌てているようだ。
ケリー視点
(すごい。太刀筋も良かったがあの体捌きがすごかった。こ、これなら助かるかもしれない。)
肩の出血もだが、脇腹も先ほどの蹴りのせいで肋骨が何本か折れているか…。
「お、おい!あいつ何者なんだ!」
「ひぃ。殺されるぞ。に、逃げろ〜」
手下風の男2人が逃げ出した。
「おい!お前ら逃げるな!」
この隙に、肇はケリーの所に駆け寄る。
『大丈夫ですか?すごいキズだ…。肩の出血が酷い。』
なんとか出来ないものか?よく分からんけど異世界って魔法とか使えないのか?
肇はケリーの肩に手を当てて、治したい気持ちで力を込めた。
その時、肇の手が白く輝きケリーの身体も輝き出した。
「なんなんだ…アイツ。回復魔法まで使えるのか?」
(こりゃ、本格的にヤバいか…。幸い、ヤツの殺害は出来た。最低限の仕事は終わった。)
男は胸から小さい筒を出して口につけた。
ピィーと甲高い音と共にリーダーの男が肇が来た方角にに向かって逃走した。
数分後
ケリーの肩は出血も止まり、なんとか剣を持ち上げる事が出来るくらいに回復して肋骨も折れた箇所はどうやら繋がったようだ。
『貴方にはなんとお礼をしたら良いかわからないくらいに世話になった。どうもありがとう。申し遅れたが私の名はケリー。ケリー・ワグナーだ。』
『いえいえ、助かって良かったです。肩のケガはきちんと病院で診てもらって下さい。私の名前は肇、中村肇です。』
『ナカムラ?と言う家名は珍しい名前で聞いたことがないな。それにしても本当に助かった。まさか回復魔法まで使えるとは。それでナカムラ殿はなぜこの森に?』
『それは…。』一瞬悩んだが、この人は信用が出来そうだし最悪街くらいまでは助けた恩で教えてもらえるだろうし。ハジメは思い切って話してみた。
『信じてもらえるか分かりませんが。昨日、別の世界からコチラに転送されてきました。前の世界では40手前の部下が数人いるしがない会社員でしたよ。』
『むぅ。異世界から転移して来たと。古い神話でその様な物語はありますが、実際に話を聞いたのは初めてです。何より目の前にいるのはどう見ても20歳くらいの青年ですし。』
『20歳?私は確かに多少見た目は若く見えるかもしれないが次の誕生日で40歳になるんですが?』
『しかし…。ちょっとそこの川の水でご自身を見てもらうと』ケリーさんは少し気まずそうだった。
川まで移動して実際に川の水で見て見ると、たしかに水面に映るのは若い男性だ。しかも見覚えのある顔だ。転移した際に身体が若返ったのか?
『確かに、これなら40には見えませんな。なんと言うかハハハ。』
『分かって頂けたら良かった。それではナカムラ殿はこれからどうするおつもりで?』
『出来れば近くの街までの道を教えて頂けるとありがたいのですが?良いでしょうか?ケリーさんもそのケガなので1人で街に戻るよりは安心だと思いますが?』
『勿論です。何よりも命の恩人ですから。もし行く当てが無ければ我が家にしばらく落ち着かれては如何か?恐らく身分を証明するものもないでしょうから私が保証人となり、身分証を発行してもらいましょう。』
『助かります。ワガママを言ってすみませんがお言葉に甘えてさせてもらいます。』
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