第2話 2つの月
肇の意識が戻った時、そこは横断歩道の上でもなく病院のベッドの上でもなかった。
明るいが照明はなく白壁と黒い石のような円いテーブル
だけが見える。あれほどの衝撃だったはずなのにケガは無い。
寝ていたのもテーブルと同じ黒い石のようだ。
『気がついたか,,,』
声はしたが姿が見えない。いや、そもそも声すらしたか?
『そうだ、意識に直接語り掛けているからな。気分はわるくないか?』
意識に?そんなことが可能なのか?それよりもここがどこで、事故ったはずなのに無傷で服も通勤時のスーツのままで。
『まぁ焦るな。今説明してやる。』
要約すると、あの少年を庇って俺は死んだらしい。
事故を起こした運転手も死亡。
あの少年は将来なんと国連で大きな仕事をする運命の子供だったらしい。
それならば助けた甲斐もある。
自分が死んだのは残念だが幸いに独身だし困ることは無い。
しいて言えば老後の両親の世話を弟に押し付けてしまったことだな。
しかし助けた功績が認められ、どうやら別な世界で生きることができるらしい。
さきほどの声の主は所謂、神様的な存在らしい。
次の人生は昨今絶賛の異世界ものらしいが
あいにく小中高、大学と
野球と柔道をやってきた肇には、仕事の部下が携帯で嵌っている「アレ」かくらいの認識しかなかった。
とはいえ、さすがにドラ〇エくらいは多少は分かってはいる。
『次の世界はそうだな、mundusと名付けるか。』
ムンドゥス?
『おまえたちの世界のラテン語で世界を表す言葉だ。安心しろ、次めざめたらムンドゥスの世界の言葉はすべて分かるようにしておいてやる。そして多少の餞別も持たせる。それはあとで確認しろ』
言語の習得と餞別もくれるのはありがたい。
『そろそろ時間だ。使命は特に決めてはいない。自由に生きて寿命がきたら本当に終わりだ。では達者でな。』
目の前が一気に白く輝き肇は意識を失い、
次に意識が戻るとそこは平原で空には二つの月が綺麗に並んでいた。
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