我ら、アンラッキー7!~たとえ我が身が不幸でも、世界の平和は守って見せる!~

青猫

本編

「今日からこの世界は俺たちが支配する!」


それは唐突であり、しかしそこに住む人々に絶望を与えた。

“キラ”と名乗る秘密結社はその日、広布市に根付く悪の組織として、広布市の人々を苦しめ始めたのだ。


だが、そんな時、希望が現れた。

そう、悪が栄える所には、現れるもの。


正義のヒーローの登場である。


——今日も暴れまわるキラの戦闘員。


「さぁ、恐怖しろ、人間!我々は、恐怖を糧に、世界を治める!」


キラの戦闘員である怪物は、人々を恐怖させ、エネルギーを集めるため、その爪をふるっていた。

そこに響き渡るは勇ましき声。


「「「「「「「待て!」」」」」」」


突然の制止に怪物は声のする方角に向き直る。


「何者だ!」


怪物のその声に、答えるかのように続く声。


「我ら、人々を守るため!」

「そして、少しでもいい人生を歩むため!」

「自身の不幸はなんのその!」

「皆の不幸を防ぐため!」

「さっときらめく幸せのスター!」


「リストラで、嫁子供に逃げられました!ラッキーレッド!」


「濡れ衣で婚約破棄をされ、家から追放されましたわ!ラッキーブルー!」


「ギャンブルで有り金全部すっちゃったよ!ラッキーイエロー!」


「痴漢冤罪、断じて許さん!ラッキーパープル!」


「昨日拾ったかばんの中身は怪しいクスリ!ラッキーピンク!」


「住んでた家が、大火災!ラッキーブラック!」


そこまでメンバーが言い切ると、真ん中にいた最後の男が自分の出番と言わんばかりに前に出る。


「そして俺!道を歩けば水を被り、家に籠れば強盗被害!旅行先では事件事故!死がエブリデイ!ラッキーグレイト!」


「絶望の中でも希望を見いだす!」

「そう、俺たちの名前は!」


「「「「「「「ラッキー7!」」」」」」」


決めポーズをとった七人の後ろでド派手な爆発が起こる。

そしてその衝撃で飛んできたスパナが、ラッキーグレイトの頭の右数ミリを通過して地面に突き刺さる。


それを見たラッキーグレイトは高笑いをあげる。


「おっしゃあ!今日もラッキーだな!」


周囲はドン引きだ。


桃「……ねぇ、いつも思うんだけど、グレイトって私たちより度を越して不幸体質よね」

紫「……なんで生きてるんだろうっていっつも疑問に思ってるわ」

青「ってか、イエロー!またギャンブルですったの!?いい加減にしなさいって私この前も言いましたわよね!」

黄「い、いや~、ほ、ホント、いつの間にか消えてるんだよ?後一回回転すれば当たるんだよ~!」

赤「とりあえず、イエローはお金を管理してくれる誰かを見つけるべきでは?……まぁ、私は逃げられましたが」

黒「……大丈夫。レッドには私がいる」


登場時の余りの混沌さに思わずたじろぐ怪物。

しかし、彼もだてに組織でやってきていない。


「お前ら如き、簡単にひねりつぶしてくれるわ!」


そう言って、持ち前の爪を用いて、先頭にいたラッキーグレイトの腹を貫こうとする。

しかし。


「ハッ!そんな攻撃、全く効かんわ!」


そう言って、グレイトは攻撃をかわそうとする。


「おわっ!?」


しかし、運悪くそこには、バナナの皮が落ちていた。

どうやら、キラの戦闘員が先ほど食べ、そしてポイ捨てした物が残っていたのだ。

グレイトはそれに足を取られ転びかける。


紫「グレイト!?」

「何のこれしき!」


そう言ってグレイトは、右手を地面につき、その右手を軸にして、そのまま怪物に蹴りをかます。


怪物も、そんなトリッキーな動きは全く予想ができていなかったのか、防御態勢を取れずに吹き飛ばされる。


「ぬわっ!?」


そして吹っ飛んだ方向にはブルーとブラックが。


「ブラック、行きますわよ!」

「うん、わかった」


二人は、飛んできた怪物に同時に蹴りを叩きこむ。


吹き飛ばされた衝撃をその身に全て吸収することになってしまった怪物は、足ががくがくとなり、立ち上がれなくなる。


「さぁ!皆さん!決めましょう!」


レッドの呼び声に呼応し、全員が必殺技の構えに入る。


「「「ラッキーキャノン!」」」

「「「ラッキーソード!」」」

「「「「「「合体!」」」」」」

「ラッキーバスタード!」


レッド、イエロー、パープルが構えるラッキーキャノン。

ブルー、ピンク、ブラックの持つラッキーソード。

二つの武器が組み合わさって、大剣となる。


それを軽々と構えるラッキーグレイト。


「行くぞ!必殺!」


「「「「「「「ラッキーフィニッシュ!!!」」」」」」」


その重々しい剣から振るわれた一閃は、見事に怪物の胴を上下に切り離す。

怪物は、息も絶え絶えになりながら、叫んだ。


「くそっ!!いつかきっと、組織がお前らを——」


そして最後まで言い終わることもなく、彼の物の体内にあらかじめ仕込まれていたのであろう爆弾が大爆発を起こす。


そして、それは、ラッキーグレイトをも巻き込んでしまう。


「おわっ!?」

「「「「「「グレイト!?」」」」」」


やがて爆発の熱が去り、そこに残っていたのは。


「げほっ!死ぬかと思った」


やや、ぼろぼろになったラッキーグレイトの姿だった。


赤「よかった、グレイトさん、無事だったんですね」

青「まぁ、この程度で死ぬような人ではないとは知っていますが……」

黒「グレイトはおかしい」


そして、彼らは、再び元の生活に戻っていく。

ある者は当たると信じて再びパチ屋へ。

ある者は今度こそと就職活動へ。

ある者は警察へ自身が拾ったかばんの中身と自分が無関係であることの釈明へ。


そして。


「よし!まずは寝る所を探さないとな!」


屋内で眠れば100%大事故が起こるラッキーグレイトは、今日もパトロールを兼ねて自分の寝床を探しに行く。


「橋の下とかいいかもな!」


——こうして、街の平和は守られるのだ。

頑張れ、ラッキー7!

負けるな、ラッキー7!


たとえ巷では『アンラッキー7』と噂されていようとも、世界の平和を守るのだ!


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

(登場人物紹介)


ラッキーグレイト

戦隊ものの真ん中にいる人。

生まれついての不幸体質。親はいない。そもそも、親に捨てられたのか、親が自身の不幸体質に巻き込まれて亡くなったのかすら、定かではない。

基本的に野宿で生活している。定住することはまれにしかない。

現代日本で自給自足で生きている。

メンバーの中ではパトロール等、一番ヒーロー活動を行っている。

それは、基本的に他にする事が無い為。

他のメンバー曰く「あいつがいるから『あぁ、俺たちはまだマシな方なんだな』と実感できる。あいつには幸せになってほしい」。


ラッキーレッド

赤い人。会社をリストラされ嫁と子供に逃げられた、普通のサラリーマン。

良い人。しかし、自身の娘位の年齢であるブラックの猛烈なアプローチに困惑している。家が無いブラックとブルーの為に自分の家の一室を貸している。

現在就職活動中であるが、スペックは割と良い方なので、そのうちいい仕事が見つかると思う。他のメンバー曰く「ブラックとさっさとくっつけばいい」。


ラッキーブルー

青い人。濡れ衣で婚約破棄をされて、家からも追放された貴族令嬢。さらに何故か異世界転移までしてラッキー7のメンバーに入ることになった。

異世界には魔法があるが、彼女は使えなかった。せいぜい魔力で自分を強化するだけ。脳筋。突然の異世界転移で家がなく、途方に暮れていたところ、レッドが自宅の部屋の一室を提供してくれた。

レッドの食事に胃袋を掴まれている。しかし、レッドは恋愛対象外。

曰く「婚約破棄はされましたが、まだ諦めておりません……」だそう。

他のメンバー曰く「ツンツンした見た目に反して凄くいいやつ。後、脳筋」。


ラッキーイエロー

黄色い人。真正のパチンカス。基本的に稼いだお金をすべてギャンブルに回す。現在、レッドとパープルに多額の借金をしている。が、返すつもりはまるでない。「当たったら返すから!」が口癖。だが、まず当たらない。でもパチ屋に行く。きっと当たると信じているから。

他のメンバー曰く「クズ。さっさとお金を返してほしい」。


ラッキーパープル

紫の人。痴漢冤罪ですべてを失った人。痴漢冤罪絶対許さないマン。特に他に言う事はない普通の人。特徴という特徴も無い。ちなみにいままで冤罪を掛けられた数は、痴漢冤罪だけでも三件。それ以外も含める場合は七件。

他のメンバー曰く「グレイトとピンクに次いで不幸に見舞われる人間。できうる限り、冤罪の証明は手伝いたい」。


ラッキーピンク

桃の人。巻き込まれ体質。色々と事件に巻き込まれる。そのため刑事さんの知り合いがいる。普通のOLさん。やばい状況に直面した際の対応力は、グレイトにも匹敵する。ちなみに怪しいカバンを拾って事件に巻き込まれたのは今回ので50件をを超えた。ただそれ以外の雑多な物を数えたら、100件はいくと思う。出先での事件ではなぜか探偵役を務めることが多い。

というか、何故か偶然出かける先がグレイトと一致して事件が発生する。

そのため、偶然グレイトに出くわした時は反射的にため息をつくようになってしまった。

他のメンバー曰く「苦労人。でも、仕事もあるし、衣食住整っているしで生活が安定している唯一のメンバー」。


ラッキーブラック。

黒い人。ずっと前にレッドに助けてもらったことがある。ラッキーレッドの事が好き。高校生で、天涯孤独の身。この前グレイトが隣に越してきた時にアパートが火災で焼失。ほぼほぼ無一文で困っていたところにレッドから声を掛けられてレッドの家に転がり込んだ。

レッドの食事に胃袋を掴まれている。

ブルーとは、一つ屋根の下で暮らすもの同士、仲が良い。

ずっとレッドにアプローチを続けている。

最近レッドがほだされてきていて、手ごたえを感じている。

他のメンバー曰く「行け!応援してるからな!」。

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我ら、アンラッキー7!~たとえ我が身が不幸でも、世界の平和は守って見せる!~ 青猫 @aoneko903

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