第13話 回想
今週で5月も3週目になるが、来週に中間テストがあるので、明日から部活動は1週間休みになる。
(無視して自主練でもしようかなぁと思ったけど、出題範囲が予想よりも広いから、真面目に勉強をするしかなさそうだ。)
そう考えながら教室の自席に座っていると、目の前に西野先輩が現れる。
「中間テストが近いのに、暇そうにしてるわね。」
「な、なんですか、先輩。それに、なんでここにいるんです?」
「藤堂先生が呼んでるから、伝えに来て上げたのよ。ピッチングマシーンのことで話したいことがあるんだって。」
「そ、そうなんですね。」
(いきなりピッチングマシーンが寄贈されることになったら、それは呼び出されるわな。)
仕方なしに、職員室へ向かう。
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「それで先生、呼ばれて来ましたけど、ピッチングマシーンのことですよね?」
なんで西野先輩も付いてくるんだろうと思いつつ、一緒に訪ねる。
「そうよ。とても高かったはずだから、ちゃんとお礼を言わなきゃと思って。校長先生からも、よろしく言われてるのと、感謝状を渡す必要があるから、そのうち、ご自宅へ伺いたいの。」
「え!いいですよ、気になさらないでください。」
「そういう訳にはいかないの。とはいっても、テストもあるし、実際にピッチングマシーンが届くのは再来週みたいだから、その後になるけど。」
「分かりました。」
「感謝状が出来上がったら、伺う日を確認させてもらうね。あと、テストも頑張ってね。西野さんも。」
「はーい。」
西野先輩が少し面倒そうに答えつつ、職員室を後にする。
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中間テストが終わって、5月の5週目に入り、採点された答案用紙が順次返却されてくる。
クラスで5番以内には入っているだろう、という成績でとりあえず安心だ。
そして、ピッチングマシーンが届き、再開した練習で早速使われている。
今日は土曜授業で午後から部活動があるが、1時間だけ参加した。
というのも、今日は先生を自宅に案内することになっているからだ。
なので、校門前で待ち合わせしている。
先生とは言え、綺麗な女性と待ち合わせるというのは、非常に緊張する。
ゲームの世界に来る前は結婚をしていたから、何だかとても悪いことをしているような気もしてくる。
(そういえば、なんでゲームの世界にいるんだっけ?たしか、新田に声を掛けられる前は……。)
そうだ。
仕事の出張で長崎へ行っていて、中華屋で昼食を食べようと思ったんだ。
それで、注文した料理が届くまでタブレットPCをいじっていたら、面白い記事を見つけたんだよな。
―野球育成シミュレーションゲーム〈球児の足跡〉をリメイク!
ストーリーと操作方法はそのままに、最新技術を駆使したグラフィック。
イベントが追加され、より強力な選手も育成可能に?
クリアすると別シナリオが加わり、よりやり込める充実のコンテンツ。―
懐かしく感じるとともに、リメイク版も面白そうだなと思っていると、女性客が自分の横のテーブル席に座り、少し考えたあとに注文をする。
「すいません、カニかまうどんを1つお願いします。」
(中華屋でカニかまうどんなんて、あるんだなぁ。)
そんな時、タブレットPCが急に強く光出す。
「ん、どうしたんだ?」
だが、その光は収まらず、むしろ激しさを増す。
もはや、目を開けられないくらいに強くなり、目をつぶってしまう。
しばらくして光が弱まったように感じたとき。
「そうなんだ!じゃあ、一緒に野球やろうぜ!」
そう、新田の声が聞こえてきたんだ。
(あの光は、一体なんだったんだろう。なんで、ゲームの世界なんかに来ちゃったんだ?)
「お待たせ。畠君。」
この世界に来た経緯を思い出していたので、先生が来るのに気づかず、思わず驚く。
「せ、先生、来てたんですね。」
「なんか、深く考えていたようだけど大丈夫?」
「大丈夫です。じゃあ、行きましょうか。」
先生と一緒に歩き始めるが、あの光のことが頭から離れない。
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