第9話 筋トレ

フィットネスジムで筋トレを始めて2週間が経った。

最初の1週間は筋肉痛になったが、2週目に入ったら、筋肉痛にならなくなった。

おそらく筋力がついてきたのだろう。

来週は筋トレの負荷を少し上げても良い気がする。


通っているジムは、学校のすぐ近くにあり、24時間いつでも利用ができる。

現代ではよくあるが、このゲームがつくられた頃には、まだ24時間利用できるジムは少ない。

ジムには、本来は朝練の時間をあてていて、筋トレを行っている。


朝練とは言ってもほぼ自主トレで、学校でする必要はあまりなく、そもそもゲームの時には朝練なんていうものはなかった。

なので、別のトレーニングをしていた方が、効果は高いはずだ。


また、ジムには毎日通っているが、鍛える場所は1日交代で変えている。

筋トレで損傷した筋繊維は、十分な休養がなければ太くならず、48時間から72時間まで空ける必要があるからだ。

ただし、体幹と腹筋は例外で、これらは筋肉が小さいため、休ませる時間は短くて良く、毎日トレーニングができる。


そのため、筋トレは以下のローテーションで行っている。

 ・下半身+体幹+腹筋

 ・上半身+体幹+腹筋

これに加えて、トレーニング後は柔軟を行っている。


体は固い方が力が出るという考えもあるようだが、よくは分かっていない。

ただ、投手については、肩や肘が柔らかい方が球速は出やすいので、柔軟をしておいた方がいいだろう。


そして、放課後は投球練習をして球速アップを図っている。

元々、投手経験がなく投球フォームが固まっていなかったので、もしかしたら、今はこれが1番効果が出ているかもしれない。

徐々に投球フォームのバラつきが減ってきている感覚があり、球速も2kmアップの122kmになった。


筋トレの効果も、3か月後に出てくると言われているので、夏予選の途中にはなるが、それなりに球速が上がっているのでは、ないだろうか。

そんな期待に心を弾ませながら投球練習をしていると、金沢主将から集合がかかる。

なんだろうと思いながら、声の方に走って向かうと、金沢主将の隣には藤堂先生もいた。


「来週から5月に入るが、調布西高校と練習試合をすることになった。

そのスターティングメンバーを発表したい。

では、藤堂先生、よろしくお願いします。」


そう促されて、藤堂先生は持っている紙に目を落とし、名前を読み始めた。

その時、頭から血の気が引いた。


まずい、西野先輩から頼まれた雑用を1ことで名前を呼ばれるようになるはずだが、投手にコンバートされた結果、2週間しか雑用をできていない。

練習試合で活躍できなければ、夏の予選にも出られない。

練習試合にまずは出場することが必須なのに、すっかり忘れていた。


「…9番ライト、前島君。以上がスタメンです。」

やはり自分の名前を呼ばれなかった。

新田の名前もなく、1年目から試合に出られる方法があると言った手前、非常に申し訳なく感じた。

どう謝ったらよいものか。


「ただ、1年生の実力もみたいと思ってるの。試合の途中になるけど、新田くんは外野手、畠君は投手として出場してもらうから、そのつもりで準備をしてください。」

えっ、今なんて言いました?

試合に出られるの?


「先生、ありがとうございました。では、解散。」

主将に言われて皆は解散し、自分も投球練習に戻っていく。

そして、球を受けてくれている新田が近づいてきて、声をかけられる。


「やったな。練習試合とはいえ試合に出られるぞ。」

「あ、ああ…。そうだな。よかったな。」


そう反応しつつ、ある疑問が頭から離れない。

雑用を途中から止めたのに、なんで試合に出られるんだ?


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