第8話 投球スタイル

「投球の組立は速球とあのカットボールにするしかない。コントロールは…、あんまり良くないよな。」


練習が終わった後、自宅でいつものように勉強をするが、どうしたら畠が戦力になるのか、考えてしまう。

新田には真ん中に構えてもらい、50球を投げたが、ストライクゾーンに入ったのは20球で、狙ったところへ行ったのは、たったの1つだけだ。


コントロールは、以下のように、狙ったところへのを算出するのに使われる。

逸れ幅(㎝)=(80-コントロールの値)±30(乱数)


最後の±30というのはランダムなので、その時々で数字が変わる。

プラスにもなればマイナスにもなり、また0もある。

だが、最大で30が加算されるため、コントロールが上限値の100だとしても30㎝逸れることがある。


逸れる方向が、ストライクゾーンより外なら、ただのボール球だが、内側に入ると、いわゆるで痛打されやすい。

ちなみに、逸れ幅がマイナスになった場合、0㎝として計算され、狙ったところにボールが行く。


狙ったところに1球でも行ったということは、コントロールは最低でも50はあるはずだ。

乱数が最大の30だった場合、逸れ幅は0になるからだ。

だが、1球だけだったことを考えると、コントロールは50か少し越えるくらいだろう。


このゲームで投手に最も重要なことは、球数を少なくすることなので、ボール球を減らせるよう、このコントロールを上げることもポイントになってくる。


そして、現実の野球だと、ストライクからボールになる変化球が、ストライクゾーンに入っているように見せる技術が大事になってくるが、ゲームにはそんな錯覚は起きない。

そのため、ストライクゾーンで、いかに勝負できるかが重要になる。


「ただ、コントロールを上げたってなぁ。この球速とカットボールで打者を抑えられる気がしないんだよなぁ。そうなると速球派でいくしかないか。」


このゲームでは、球速への評価が高く設定されており、150km越えの速球はあまり打たれない。

現代野球では、トレーニング技術が上がった結果、160kmからが豪速球と言われるが、このゲームがつくられた時代は150kmから豪速球とされている。

ましてや、高校球児には、コースが例え甘くても150kmはまず打てない。


近年、この球速が急に上がった大きな理由は、下半身トレーニングと体幹トレーニングが球速アップに効果的と分かったからだ。

この時代の投手の練習といえば、投げ込むかひたすら走り込むというのが、一般的だった。


「ゲームの世界で効果が出るかは賭けだが、これをやる以外に方法はない。」

そう覚悟を決めると、勉強を止めリビングに向かう。

そこには、本を読んでいる父親がいた。


「父さん、フィットネスジムに通いたいんだけど、お金よろしく。」

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