第5話 本入部

野球部に入部して2週間が経った。

ずっと西野先輩にこき使われているが、おかげで先輩たちを含めて、チームメイトに顔を覚えてもらったし、関係も良くなっている気がする。

勉強も初日こそ寝てしまったが、2日目からは家でも勉強ができている。


「とは言っても、ゲームじゃないから勉強の成果が出ているのか分からないんだよな。」

そうなると、畠の初期能力を思い出しながら、その後の能力アップを推測して、計算していくしかない。


確か、初期能力は以下だったはずだ。

 ・打撃技術 40

 ・パワー 50

 ・選球眼 60

 ・走力 55

 ・走塁技術 40

 ・送球技術 40

 ・捕球技術 40

 ・打球反応 40

 ・学力 50


この能力がどの程度高いかだが、対戦校の各項目の能力と比較すると分かりやすい。

ネームドキャラは別とすると、以下になる。


 ・地区大会1回戦から3回戦まで 20~40

 ・地区大会4回戦から準々決勝まで 40~70

 ・地区大会準決勝から甲子園準決勝まで 70~80

 ・甲子園決勝75~85


畠は、初期状態から、地区大会4回戦から準々決勝までのレベルにある。なんで、野球部をやめようと思っていたのか不思議なレベルだ。


そして、畠は足が速いこともあり、守備範囲が広いセンターを守ることになる。

ちなみに、左投げ左打ちで、内野安打も狙える。


「そういえば、主人公のポジションはプレーヤーが決めるけど、新田はどのポジションなんだろう?」


野球において重要なポジションは、なんと言っても投手だが、野手でも大事なポジションがある。

センターラインと言われる、捕手、二塁手、遊撃手、センターの4つは守備の要で、特に大変なのが捕手と遊撃手だ。


新田の能力を考えると、投手、捕手、遊撃手のいづれかでプレーしてほしい。

そう考えていたら、麦茶づくりをしている新田を見つけた。

巻き込まれたにも関わらず、文句を言わずに雑用をこなす姿を見て申し訳なく感じる。


新田にポジションを聞こうか迷っていると、主将から集合がかかった。

「新入部の1年生は集まってくれ。」

そう言われ、6名が集まる。


主将の隣には、藤堂先生もいる。

一体何が始まるんだろう?

「今日は、みんなが本入部の初日だから様子を見にきたの。それと、みんなのやりたいポジションも聞こうかと思って。うちって、部員が少ないから、希望が通るわけじゃないんだけど。」


野球をするには最低でも9人が必要だが、各学年の部員は6名しかいない。

この高校はサッカー部が有名なので、身体能力が高い学生は、そっちに取られてしまうのだ。


順番に、外野、セカンド、サード、外野と答えていく。

そして、次は新田が答える。

捕手キャッチャーをやりたいです。小学校と中学校でも捕手だったので。」


なるほど。捕手なら悪くない、と思いつつ、あることに気がつく。

あれ、投手がいないぞ?

「じゃあ、最後に畠君は、どこのポジションがやりたいの?」

藤堂先生に聞かれ、果たして外野手と答えて良いものか一瞬戸惑う。

だが、それがいけなかった。


「畠、投手ピッチャーをやりなよ。1年生に投手が1人もいないんだし。」

後ろから、そんな声が聞こえてきた。

後ろを振り向くと、そこにいたのは、西野先輩だった。


「え、あの、投手、…ですか?」

「そうだよ。まさか、やらないとか言わないよね?」

「は、ははははは…。」

「確かに、1年生に投手が1人もいないのは困るし、畠君、投手をやってもらえる?」


藤堂が、少し上目遣いで頼んでくる。

それって、卑怯じゃないっすか?

「わ、わかりました…。やります。」

「ありがとう!」


これって、コンバートイベントだったのか…?

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