第3話 評価上げ

「ついてこいって言うけど、こっちは部室棟だよ?部室にでも行くのか?」

「そうだよ。」

「なんで部室に行くんだ?」

「まあ。行けば分かるよ。」


そう話している間に、部室の扉の前に着く。

そして、扉をノックして中に入ると、そこにはジャージ姿の女性が1人いた。

美人だけど、気の強そうな女性。

3年生の先輩でマネージャーの西野唯にしの ゆいだ。


「西野先輩ですよね?何か手伝わせてください。」

「えっと、あなたたちは誰?」

「今日から野球部に入部した、畠とこっちが新田君です。」

「あそう。じゃあ、ここにあるボールの入ったケースをグラウンドに持っていってもらえる?」

「わかりました!」


ゲームでは、練習以外に勉強と相談というコマンドがある。

試合に出られるようにするには、主将とチームメイトから評価される必要があるが、それをすぐに上げる方法は、この西野先輩への相談、もとい雑用だ。


雑用をすると、なぜ評価が急に上がるのかは良く分からない。

おそらく、部員が練習に専念できるから、ということなのだろう、チームメイトの評価が上がる。

4月の間、ずっと雑用をしていると、その姿を見た金沢主将が、5月の1週目にある練習試合に出場させてくれる。


主人公と畠の能力なら、練習試合で結果を残せるので、主将の評価が上がり、夏の試合に出られるまでになる。

また、主将の評価が高いと、部員みんなの練習メニューに意見を言ったり、部費の使い道に介入して備品を揃えられるが、5月からは、これらもできるようになるというおまけ付きだ。


ちなみに、5月以降も西野先輩に相談を続けると付き合うことができる。

他の女性キャラと付き合うよりも、なぜかデートの時の体力の消費が大きく、デートを重ねると怪我をしにくいというスキルが身に付く。

このスキルは他の方法でも得られ、付き合うメリットは少ないのでやらないが。


これを続ければ試合に出られるとあって、浮かれた気分で、グラウンドにまでケースを運ぶ。

「金沢主将、西野先輩に頼まれたボールを持ってきました。」

そう言うと、金沢主将や周りにいる部員が哀れむように、こっちを見てくる。


「お前ら、西野に捕まったのか?」

「え…、それってどういうことでしょうか?」

「いや、まあ。別になんでもないよ。とりあえず、ありがとう。」

「は、はぁ。」


なんだろう。なんかイメージしていたのとは違う。

他の先輩たちも、あの1年生が生贄になったのか、これで俺らは安心だな、助かった、という声が聞こえてくる。


えーと、もしかして、評価が上がる理由は、雑用をしたからではなくて、西野先輩のターゲットになってくれたから、ということ?


「あ、君たちはさっきの畠君だよね?次は麦茶づくりをやってほしいんだけど、麦茶のパックがたぶんないから買ってきて。あと、来週に応急手当の研修があるんだけど、私の代わりに申し込んで受講してきてくれる?」


なんか、面倒なことになった気がする…。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る