第41話 ライブバトル開幕

 ―栞菜かんな視点―


「あっはっはっ、うひひっ、何だお前らその顔! アザだらけで面白いな!」


 今日はライブ当日。私達AGEは、絢香さん達に挨拶するために控え室に挨拶に行った。その時、たまたま入口のところで胡桃達と会ったから一緒に控え室に入ったはいいんだけど、音葉おとは胡桃くるみの顔を見た絢香さんは大爆笑。すっごいなぁ。人のアザだらけの顔見てこんなに大爆笑する人がいるんだ。

 大丈夫? 何があったの? とかの一言の前に笑ってるんだもんなぁ。


「絢香さん。笑い過ぎですよ……」

「いや、だってさ、あはは。んで? 何があったんだよ?」

「胡桃に殴られました」

「音葉に殴られました」

「「は?」」


 いや、何でそこで喧嘩腰になるのさ。お互い言ってること間違ってないじゃん。てか、今日はめんどくさいから喧嘩はやめてよね。


栞菜かんな。解説してくれ」

「なんで私なんですか……」

「だって知ってるんだろ? そんな顔してるぞ」

「どんな顔ですか。まぁ確かに知ってますけどね」


 果たして私はどんな顔をしていたんだろうね。気になるところではあるけど、何となく深く追求するのはやめておいた方がいいような気がする。

 まぁとにかく、今は2人のことを説明するとしますかね。


「なるほどなぁ。お前ら最高にバカだな」


 おぉ、ストレートだ。直球も直球、ド直球だ。まさに火の玉ストレートだね。


「師匠聞いてよ。胡桃が悪いんだよ!」

「違います! 音葉が悪い!」

「いや、どっちでもいいよ。そんなの」

「「どうでもよくない!!」」


 あーあ……こりゃまた始まりそうだなぁ。璃亜りあなんて、我関せずって感じで、夏鈴かりんさんとアーリャさんと楽しくお喋りしてるし。


「えっと、AGEの佐々木栞菜さんですよね? 私、胡桃と同じバンドの山田優やまだ ゆうです」

「あ、どうも」

「何か胡桃がご迷惑かけたみたいですね。すいません」

「あぁいつもの事だから大丈夫ですよ。それにうちの音葉も悪かったですし、気にしないで下さい」

「あはは……苦労してるんですね」

「えぇ、全くですよ」


 ほんとに何で私だけこんなに苦労しなくちゃいけないんですかねぇ。もう嫌になっちゃいますよ。えぇはい。


「まぁとにかく。今日はよろしくお願いしますね」

「はい。こちらこそ」

「では、私達はこれで」

「はい。ほら、音葉行くよ」


 胡桃といがみ合っている音葉の首根っこを掴んで、絢香さん達に挨拶をしてから、控え室をあとにした。


「ちょ、栞菜〜、痛いってばぁ。離してよ〜」

「はいはい。とにかく、大人しくして。分かった?」

「分かったよ」

「ったく……」

「もぅ……乱暴なんだから」

「あのまま、ほっとくと、また胡桃と喧嘩するでしょ」

「胡桃が突っかかって来なければいいんだもん。だから胡桃が悪い」

「あーはいはい」


 絶対に言うと思ったよ、それ。もう聞き飽きましたよ。どーせ、何言ったところで、この意見は変わらないんだろうし一生言わせとこう。


「ほら、そろそろリハ行くよ」

「はーい」

「璃亜もね」

「はいよー」


 ――――

 ――


 ―アラタ視点―


「おっす。アラタ」

「おう」


 間もなくライブが始まるところで、ようやく龍がやってきた。

 今日は随分遅かったな。いつもはほぼ一番乗りくらいなのに。


「いやぁ、ギリギリだったわ」

「何かあったのか?」

「まぁちょっとな」

「そうか」


 濁されたってことは、話したくないか本当に大したことない事なんだろうな。まぁ無理に聞き出すことでもないし、別にどっちでもいいか。


「勝つと思うか?」

「さぁな。でもまぁ、音葉おとは達なら大丈夫なんじゃないか」

「ほーん。信頼してるねぇ」

「まぁな」

「おぉ。音葉ちゃん愛されてるなぁ」

「何で愛されてるになるんだよ」

「ん? 違うのか?」

「うるせぇ。はっ倒すぞ」

「怖っわ……」


 やかましいわ、バカタレ。

 お前が余計なこと言うからだろうが。


「……否定はしないんだな」

「ん? 何か言ったか?」

「んにゃ。何でもねぇよ。ほれ、そろそろ始まるぞ」

「あぁ」


 ――――

 ――


 ―音葉視点―


 ライブもいよいよ終盤で残すのは、私達AGEと胡桃くるみ達のデルタのライブバトルと師匠達のルミナスだけになった。


「よし、行こっか。栞菜かんな璃亜りあ。準備はいい?」

「もちろん」

「当然。派手に行こう」

「にひひ、最高」


 すでに会場は大盛り上がりだけど、ここで私達がさらに盛り上げて、師匠達の引退ライブを最高なものにしないといけない。

 でもさ。ごめんね、師匠。ちょっとだけ私情を持ち込むね。

 胡桃に負けないために私のためだけに演奏するよ。その代わり、絶対に負けないしめちゃくちゃ盛り上げるって約束するから。


「音葉」

「何? 胡桃」

「負けないから」

「それは私も同じ」

「そう。じゃ、もう言葉はいらないね」

「うん。あとは音楽で演奏で語ろうか」


 まさか、胡桃の方からあんなこと言ってくるなんてね。ちょっと意外かも。

 でもよかった。あの目、本気だ。

 にひひっ。いいじゃんいいじゃん。面白くなってきた。


『さぁ会場の皆さん! お待たせしました! ただいまより、ライブバトルを開始します! 今回ライブバトルをしてくれるのは、我らがライブハウス、タービンズの看板バンド! デルタとライブハウス、アークエンジェルの超人気バンドのAGEだー!』


 司会のマイクで、会場のボルテージが跳ね上がる。

 こういう人達って本当に盛り上げるのが上手いなぁ。ちょっと尊敬。


『さぁ! ライブバトルスタートだー!』


 司会のマイクが、終わると胡桃達が先に演奏を始めた。今回の先行は胡桃達だ。

 演奏するのは3曲。交互に演奏して、1曲ごとにどちらの演奏の方がよかったか、会場のお客さんに投票してもらう。んで、最終的に2本取った方の勝ち。そして必ず1曲は神曲でやること。これが今回のルールだ。


 ――――

 ――


 胡桃達が最後の曲を演奏し始めた。

 私達は1曲目に『MyStory』を演奏したけど、悔しいことに胡桃達に取られてしまった。でも2曲目に演奏した『サムライMusic!』で取り返した。これでお互いに1本ずつ。この最後の曲で決まる。


「ラスト……新曲の『Let's show time』」


『Are you ready Let's Go!

 テンション上げてド派手に激しく

 Let's Showtime!

 盗まれてしまった私のハート

 闇にのまれて見せなくなってしまったんだ

 廃人みたいに無気力で空っぽの私……

 こんなのはごめんだ

 反逆を始めようか さぁ!

 やられたらやり返す! 借りは返すぜ!

 奪い取ってやるさ Let's Showtime!

 手を伸ばして突き進め『運命デスティニー

 迷いなく行け『正義ジャスティス

 舞い上がれ高く『自由フリーダム

 Are you ready Let'sGo!

 ボルテージ上げて華麗に咲き誇る花火のようにLet's Showtime!

 一瞬の迷いが刹那の不安で全てを奪われてしまったんだ

 奪い返すなら今だ立ち上がれSTAND UP!

 仮面を外して走り出せさぁ!

 どこまでも高く誰よりも速く加速して

 翔けて昇れよSky-High!

 掴み取れ『運命デスティニー

 迷いのない『正義ジャスティス

 大きな空へ『自由フリーダム

 覚悟は出来たか? 私は出来てる

 始めるんだ最高のShowtime!

 永久機関の如く止まることのない奪い返した私のハートAre you readyLet's Go!

 テンション上げて目にも止まらぬ速さ翔け抜けて行けHighSpeed!

 高まったボルテージを花火のように打ち上げて咲かすんだ

 覚悟はいいか? さぁ始めようか

 最高に上がるパーティーを

 Let's Showtime!』

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