幸運の数字
ねこじゃ・じぇねこ
第1話
7月7日朝7時、私はこの世に誕生した。
そして、7歳になるという年に突然の病に倒れたものの、誕生日の朝7時に奇跡的に回復したという過去がある。
この話をすると、周囲の人たちは誰もが口を揃えて言う。
やっぱり7は幸運の数字なのだねって。
確かにその通りだ。子供の頃から言われてきたことでもあるし、私自身も信じてきたことでもある。
7は幸運の数字。私は幸運に恵まれた女の子なのだと。
それを何よりも感じたのは、貴女がそう言ってくれた時の事だった。
「じゃあ、君自身もきっと幸運を招くのかもしれないね」
そう言いながら笑いかけてきた彼女の顔は、どんなに忘れたくても脳裏にこびりついて離れない。
『実はね、前に言っていた恋が実ったんだ』
17歳になった7月7日の夜7時、スマホに届いた彼女からのメッセージに、私は固まってしまった。
私の恋が終わってしまった。
そもそも無謀な恋であったなら、まだ傷も浅かったかもしれない。
いっそ私が恋愛対象外であったなら、それだけで傷を舐める理由ができただろうから。
それともやっぱり結局は選ばれなかったことに嘆いただろうか。
いずれにせよ、私は恋に破れてしまった。
大好きだった彼女には、大好きな女性がいた。
私が告白するより少し前に、彼女は勇気を出してその想い人に気持ちを告げ、めでたく結ばれたのだ。
本来ならば、一緒に喜ぶべきことだっただろう。
けれど、私は落ち込んでしまった。
彼女の幸運を、喜べなかったのだ。
おめでとう。
震える指ではそんな単純な文字すら打てず、スタンプだけを押した。
彼女は悪くない。
それに、告白された相手の女性も悪くない。
ただただ彼女には勇気があって、私には勇気がなかっただけのこと。
悲観すべきことじゃない。
縁が切れたわけじゃないから。友達でいればいいだけのことだから。
それでも、今だけは言わせてほしい。
7は幸運の数字なんかじゃないのだって。
幸運の数字 ねこじゃ・じぇねこ @zenyatta031
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