第2話 現代の中で

川に釣りに行って不思議な体験をしたのが数時間前。

なのに目の前に見えてる人は、いや正確には姿は無い。何故なら後に帰宅した際、家族が見えてなかったからだ。


「どう説明したら良いのだろう…」


政宗はまだ現実の実感が湧かなかった。夢と現実の半ばといった所だろう、それは当たり前で歴史の人物が目の前にいるのだから。


「あ、あの… 僕は…」


『君は政宗君。そう聞いている』


晋作は切れ味鋭い話し方で政宗に言った。

こうなると政宗は言葉がうまく出てこない。

そもそも何で自分のもとに来たのか全く分からなかった。

しかも名前まで知っていた。

"そう聞いている"とは誰から聞いたのだろう…と、政宗が考えていると


『必要以上に詮索するのはやめたまえ』


!?


晋作の口から出た一言に政宗は硬直する。

考えている事が筒抜けなのか、はたまたリンクしているのか…

どちらにしても止めろと言われたのだ、まずは現実のこの状況をきちんと理解しようと思い口を開く。


「高杉さん…あ、あの何故ここにいらっしゃるのでしょうか。」


まずは理解をしたいのが幕末の英雄が何故パッとしない僕の前に現れたのか、だ。


『詳しくは言えぬのだが、実は私も何故ここに来ているのか半分しか理解しておらぬ』


晋作はそう言うと空を見上げた。


『僕は僕を見つけに来た。いや、僕のやりたかった事は何だったのか、それを知るためには君の力が必要だと言われたのだ。』


「僕の力が?」


『うむ。 私の持っていないものをどうやら君は持っているようだな』


「僕が持っているもの…」


政宗は一体自分のどこに人を凌駕する才能や魅力があるのか皆目検討がつかなかった。


『君が持っているもの、それはこれから分かるものなのだ。

それが僕にも君にとっても最も大切なものである。』


政宗は皆目検討もつかない。


幕末の英雄が自分を必要とする、こんな現実離れした話も目の前にいる晋作を見ては現実離れといえないのだか、とにかくずっとこの河原にいるわけにはいかない。


「あの、高杉さん。 もしよかったら私の家でゆっくりされませんか?」


『それはありがたい。流石に右も左もわからぬ場所で独りとはちと心細かったところだ、ご厚意に甘えるとしよう』


ところで…と晋作は続ける。


『君は釣りに来たのではないのか? 見た所、釣果がないようだが』


「暇を潰すために久々にやってみただけなんです。今日は何だが他のことも手につかなくて…」


政宗はここ数ヶ月の虚しい過ごし方を晋作に見抜かれたように感じた。


『ならば釣果があるまで頑張ってみたらどうだ。 僕も君と少し話がしたいのでな』


河原に座った晋作は川の水面を見ながら魚のいる位置を探るように見渡しながらそう言った。







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