シルフの里編⑥

「シルフ様に祝福をもらったんだね。で、手合わせというわけか。じゃあ、お手並み拝見といこうかな」


 ブリーゼはそう言うとふわりと宙を舞った。今までは飛ばれたら苦戦していたがそれも今日で終わりだ。


「ーー慈愛に満ちる大地よ、我の足を束縛せし鎖を解放せ、ウイング!」


 俺の身体はふわりと浮き上がる。


「ーー風よ、鋭い刃と為せ、彼の者を切り刻め、シャイド!」


 そこから風の刃を生み出し、ブリーゼを襲う。

 が、ブリーゼが手を一振りすれば風の刃は掻き消えた。


「やるじゃん、サクラ」

「今のって、風の壁?」

「御名答。不思議な顔をしてるね?」

「呪文の詠唱がなかったから」

「なるほどね。残念ながら、アタシは詠唱なしで魔法が使えるんだよ。サクラとは年季が違うからね」


 ブリーゼが手を振り下ろすと風の刃が襲ってくる。俺は剣を抜き、叩き落とす。魔法での対処は間に合わない。


「ーーこれならどうだ!」


 刃に手を沿わして、風を纏う刃へと変える。

 これならば詠唱は要らない。高校の体育でやった剣道程度の知識しかないが、剣で戦える。

 ブリーゼの壁を貫通し、纏っていた風がその髪を少しだけ切り落とした。


「髪がぁ!切れた!酷いよ、サクラ!」


 うるうるとブリーゼの瞳に涙が溜まる。

 やばい。泣かせてしまう。


「ごめん、ブリーゼ泣かないで?ちょっとだけだから大丈夫だよ」

「アタシ、変じゃない?」

「変じゃないよ。かわいいよ」

「なら、許してあげる。やっぱり、戦いは嫌ね」


 パチパチと拍手がして、そちらを向くとそこにはシルフがいた。


「すごいですね、サクラ。いきなり空中移動を使えるとは驚きました。なかなかコントロールが難しいのですよ」

「サクラ、すごいにゃ。ミミも飛んでみたいにゃ」

「シルフ様、ミミを抱えて飛ぶことって可能なんですか?」

「可能ですよ。コントロールの難易度はあがりますが」

「じゃあ、うまくできるかわからないけど飛んでみるか?」

「いいのかにゃ?」

「いいよ。一緒に飛ぼう、ミミ」


 俺はミミを抱えて空を舞う。


「ーーブリーゼ。これからどうします?」

「サクラに着いていきたいと思います。もちろんシルフ様の許可が出ればですが」

「着いていきたいと思う理由は?」

「戦力、ですかね。あと、心配だからです。サクラ、何も知らないから危なっかしくて」


 優しい顔でブリーゼがシルフに答える。

 好意を言わないのがブリーゼらしいなとシルフは笑う。


「いってらっしゃい、ブリーゼ。力になってあげなさい」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る