シルフの里編⑤

「……はい。確かに俺は転生者です」


 俺の返事にシルフはふわりと微笑む。


「では、死に際は覚えていますか?」

「はい。ええと、確か俺はーー」 


 そこで言葉が途切れる。死んだことは覚えているのに、詳細が思い出せない。


「サクラ。あなたに触れてもよろしいですか?あなたの記憶を少し見ても構いませんか?」


 知りたいことだったし、特に拒む理由もないので俺はシルフの言葉に頷く。

 が、バチッと音がし、シルフの白磁の手が赤く腫れ上がる。


「……神の封印があるようですね。私の干渉は受け付けぬようです。残念ですが、自力で思い出すしか手段はなさそうです」


 しょんぼりしてしまったシルフに俺は慌てて声をかける。


「ゆっくり思い出していくんで大丈夫です。力になろうとしてくださってありがとうございます。あの、いくつか聞いていいですか?」

「私に答えられることであればなんでも大丈夫です」

「転生者は何か特別なんですか?」

「一言で言ってしまえば、神に選ばれた存在です。何らかの役目を負っているでしょう」

「他に転生者はいるんですか?」

「いますよ。転生者同士はなぜか引かれ合うようで、これから出会うことがあるかもしれませんね」


 それならば忘れてしまった存在ともまた出会えるのだろうか。

 出会いたいなと切に願う。


「ブリーゼを受け入れてくれたそうですね。ありがとうございます。彼が心から笑うところを久しぶりに見ました」

「驚きはしましたが、ブリーゼはブリーゼですから。ブリーゼにはたくさん助けられましたし。風の能力ももらいましたし」

「ふふ。魔法は不思議な感じでしょう?」

「そうですね。ゲームみたいでテンションあがりました。けど、いざ戦いになると怖いだろうなと思います」

「傷つけることが出来ますからね。力を望むなら私の祝福を与えることもできますがどうしますか?」

「この世界に戦争はありますか?」

「残念ながらあります。だから、自分や仲間を守るために力は必要だと私は思います」


 シルフの言葉に俺は考え込む。

 守られるよりは守りたい。

 もし手を汚さなければならないときは、自分がその役割を担いたい。

 ならば、力は必要だ。


「ーー力が欲しいです。誰かを傷つけるためじゃなく、守るために」

「ならば、祝福を与えましょう」


 ふわりと風に包まれ、力が満たされていく。


「後でブリーゼと戦うのが良いでしょう。ブリーゼはかなり強いので、良い練習になりますよ」

「はは。負けられませんね。こう見えて負けず嫌いなんです」


 俺とシルフは顔を見合わせて笑った。








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