シルフの里編④

「え?ブリーゼ?どうしたの、その格好?」


 朝起きるとブリーゼはいつもの女性用の服を着るのではなく、男物の服を着ていた。


「シルフ様に会いに行くからね。さすがにシルフ様相手に女装は失礼にあたるから」

「じゃ、俺も着替えたほうがいいんじゃ?」

「それは大丈夫。むしろ女装を勧められるくらいだよ」


 ブリーゼは正直、格好よかった。里の女の子たちに追いかけられるのも無理はない。


「そんなにジロジロ見て、やっぱり変だと思ってる?」


 ジト目で見てきたブリーゼに俺は苦笑しながら答える。


「変じゃないよ。格好いいなぁって思ってた」

「……か、格好いいって……格好いいのはサクラのほうじゃない」


 ゴニョゴニョとブリーゼは顔を赤くしながら呟く。


「ん?なんか言った?」

「ううん。ありがと、サクラ。ちょっとミミの着替え見てくるよ。サクラの服はここに置いておくね。ここの民族衣装だからもし着方わからなかったらちょっと待ってて」

「うん。いってらっしゃい」


 置かれた服に手を伸ばす。緑を基調にし、薄い布が何層かになっていて美しく、かつ軽く出来ている。


「んー……着物の帯?」


 良くわからない構造の服に俺は苦笑いしながら、ブリーゼの帰りを待つことにした。


 ☆


「にゃー。この服、スースーするにゃ」

「思ったより布面積ないよな。これ、さすがに男ってバレるんじゃないか?」

「大丈夫よ。サクラは中性的だもの」

「う……あんまり嬉しくない」


 とは言ってもブリーゼの服も格好いいが露出が多かった。


「じゃあ、シルフ様の元に行きましょう」


 ブリーゼが俺とミミの身体を風魔法で浮かせ、空高く飛んでいった。



 ☆



「シルフ様、お客様をお連れしました」

「皆さま、どうか顔をお上げください。どうぞ楽になさって?」


 シルフは息をつかずにはいられない絶世の美女だった。さらりと風に揺れる髪さえも美しく輝いて見える。


「お名前をお伺いしても良いかしら?」

「ミミですにゃ!」

「サクラ……、いえ、川井咲良です」

「ミミとサクラね。サクラはどこの国出身なのかしら?珍しい名前ね」

「それが、サクラは記憶の一部を失っているのです。だから、シルフ様に一度見ていただきたいと思い、連れてきた次第です」

「なるほど。では、ブリーゼの言う通り見てみましょうか。プライバシーもあるでしょうから、ふたりは席を外してもらえるかしら?」


 シルフの言葉にブリーゼとミミは席を外す。



「ーーあなたは転生者ですね、サクラ?」



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