シルフの里編③

「え、ブリーゼってばふたりもお嫁さんを連れて帰って来たの⁉」

「私、ブリーゼのこと好きだったのに!」

「わたしも!」

「そういうことだから、みんなごめんね?行こう、ミミ、サクラ」

「ぐぬぬぬ。かわいい系と綺麗系とで隙がない……っ!」

 悔しそうな里の仲間がブリーゼたちを見送っていた。



 熱烈な出迎えの後、はぁーとブリーゼは特大のため息をついていた。


「……ふたりとも、何の説明もなく付き合ってくれてありがとう」


 ブリーゼの家にお邪魔し、俺たちはひと息つく。


「……ブリーゼが俺を女装させた理由がよくわかったよ」

「あはは。すごいでしょ?」

「うん。ブリーゼが女装してるのは求婚されるのが嫌だから?」

「ううん。かわいい格好をしてるのはただ単にしたいから。かわいいものが好きなの。恋愛対象は女の子だけどね」

「じゃあ里の子たちが相手でもいいんじゃ?」


 俺の言葉にブリーゼは首を横に振る。


「ここじゃ男の格好をさせられるんだ。アタシはかわいい格好をして、それを認めてくれる相手と恋愛したいんだよ。だから、里を出て旅をしてたわけ。……騙すような真似してごめんね。女装なんておかしいし、気持ち悪いでしょ?」


 ブリーゼは笑っているが、泣いているように見えた。傷ついた心が顔を覗かせる。


「びっくりはしたよ。でも、気持ち悪いとは思わない。だって、それがブリーゼだし、よく似合ってる」


 キョトンとブリーゼは鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしている。


「ブリーゼはめちゃくちゃかわいいよ」


 ☆


「……ねぇ、ミミ。サクラのあれって何?天然なの?」


 顔を真っ赤にしたブリーゼがミミに問いかける。


「よかったにゃ、ブリーゼ」

「……天然タラシめ。アタシ、男は守備範囲外なんだけど」

「サクラは男とか女とか気にしてないにゃ」

「……うん。獣人差別もないしね」

「そうにゃ」


 パタパタとミミは尻尾を振る。


「ブリーゼ、嬉しそうだにゃ」

「そ、そんなことないってば!」

「ブリーゼは友達だけど、ミミ、負けないにゃ?」

「だから、そういうんじゃないってば!」


 胸がポカポカとあたたかい。


「ふたりとも外は寒いからそろそろ中に入ってこいよー」

「はいにゃ」

「わかったわ。また女子会しましょ、ミミ。あ、アタシ、言いそびれてたけどミミにも感謝してるのよ?アタシの秘密に気づいても変わらないでいてくれてありがとう」

「お礼はいらないにゃ。ブリーゼはブリーゼにゃ?」

「ふふ、そうね。アタシはアタシだものね」


 心から笑うブリーゼは本当に綺麗だった。

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