シルフの里編①
「……ミミってさ、ひとりで暮らしてるとき、塩はどうやって手に入れていたんだ?」
「にゃ〜?しおって、なにかにゃ?」
「サクラ、基本的に獣人は塩分を必要としないわよ?」
俺はブリーゼの言葉にがっくりと肩を落とす。
風の魔法を覚え、魚や肉を得ることが容易になり、食事情は改善した。野菜や果実の類はブリーゼが知識を持っていたので、非常に助かった。
「塩が欲しいなら岩、かしら?」
「あぁ、岩塩か。あれ、どうやって塩にするんだっけ?」
「塩を探すより、人間を探して交換してもらうのが早いんじゃない?」
ブリーゼの言葉にうーんと唸る。俺自身は何の問題もない。が、獣人は人間に迫害されているため、ミミのことを考えるとあまり人間に接触はしたくなかった。
「……確かに早いけど、ミミに嫌な思いはさせたくないからやめとくよ。塩は自力でどうにかするさ」
俺はそう答え、岩塩らしきものをかき集めた。
☆
「ん!うまい!これだよ、これが欲しかったんだよ!」
俺は蒸し焼きにした芋に苦労の末生成した塩を振り、かぶりついて歓喜の声をあげていた。
「そんなに美味しいのかにゃ?」
「うまいよ。食べてみるか?」
「食べるにゃ!」
ふーふーと息を吹きかけながら、ミミはかぶりついたが、みゃっ⁉と背中の毛を逆立てていた。
「はい、お水」
「ブリーゼ、ありがとうにゃ〜」
ぐびぐびとミミは水を飲む。
やっぱりミミの体質はネコに依存するようだ。それで知能は人間と変わらないのだから、なんとも不思議である。
「ごめんな、ミミ。塩、食べさせちゃって」
「謝らないでにゃ、サクラ。ミミが食べたいって言ったんだにゃ」
サクラはミミがかわいいようで、また耳を触っているなとブリーゼはふたりを観察していた。
「サクラ、追加のお水入れてくるわね」
「重くないか?大丈夫か?」
「魔法を使うから余裕よ」
☆
「ブリーゼ。ミミ、こんなことしてサクラに怒られないかにゃ?」
「大丈夫大丈夫!サクラ、ミミのこと気に入ってるから!既成事実さえ作ってしまえばこちらのものなんだから!」
「キセイジジツって何かにゃ?」
「有り体に言えば交尾よ!」
「交尾にゃ⁉」
ミミの顔が真っ赤に染まる。
「そう。この薬でふたりともしたくなるのよ?ミミだってサクラのこと好きでしょ?いいチャンスだと思わない?」
☆
「なんか、暑いな。身体が火照ってる」
「サクラもにゃ?ミミも暑いにゃ〜」
ベタベタといつにも増してミミは俺にくっついていた。いつもは何も思わないのに、自然と胸に目が行き意識してしまう。
「サクラ、耳、撫でてにゃ〜」
ミミの甘える声に耳に手を伸ばす。が、ミミは熱い吐息と甘い声を上げ、ドギマギしてしまう。
「サクラ、こっちもにゃ」
腕を取られ、胸に導かれる。これ以上は理性がヤバイと俺はミミから離れる。
「ーーミミじゃダメかにゃ?」
後ろからミミに抱き着かれ、柔らかなものが背中に触れ、俺の中の何かがプチンと切れる音がした。
「ブリーゼっ!ブリーゼさんっ!どういう状況か説明して⁉」
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