彼女の償い編⑤

「……そうか。サトミは辛い思いをしたんだな」

「辛いけど自業自得だからね。でも、裏切られたことは知りたくなかったかな」


 ぐいとジルがサトミを抱き寄せる。


「我のものにならないか?不自由な思いも、寂しい思いもさせないと誓うぞ」

「……私たち出会ったばかりじゃない」

「おかしいか?」

「おかしいとは言わないけど、しばらく恋はしたくないかな」

「なら、心の傷が癒えるのを待とう。友人ならどうだ?」

「友達なら歓迎かな?」

「我は人間ではないが、それでもか?」

「ジルは何者なの?」

「吸血鬼さ」

「あぁ。だから生け贄というわけね。ジルは人間を襲うの?」

「襲わないさ。血を貰うときはちゃんと同意を得て、お金を払っているよ」

「なら、問題ないわね。よろしく、ジル」

「ありがとう、サトミ、ポテト」


 こうして私に異世界ではじめての“友達”が出来た。


「さ、友人のために“生け贄”たちの行方を探そうか」


 ☆


「ーーお兄さん、綺麗だねぇ。イケメンだし高値が付きそうだ」

「それは本当かい?彼女の薬を買えるかな?」

「あれ?お姉さん病気なの?」

「あぁ。薬があれば治る病気なんだ。我は彼女を助けたい。だから自分を売って、金にするのだよ」

「愛だねぇ」


 ニヤニヤと笑いながら仲介の男は私を見ていた。


 ーー我が商品になろう。

 ーージルだけを危険に晒せないよ。

 ーー心配は要らないよ。たぶん、本命はサトミになるだろうから。

 ーーえ?私?

 ーーサトミは美人だからな。病人と言えば、我が売られた後、サトミも狙われるだろうからね。ポテトはサトミの後を気づかれないように追って。あとで我と合流しよう。


「はいよ、金だ。良かったな、金で命を買えて」


 私は重たい袋を受け取り、ありがとうとジルに告げる。ジルは男に連れられていく。


「お姉さんは俺と一緒に来てもらうよ?」


 口に布が当てられ、私は意識を手放した。



 ーー作戦開始。



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