彼女の償い編③

「ーー早くサクラに会いたいねぇ、サトミ」


 ポテトはサクラのことが大好きだった。

 サクラはボクにも優しかったし、いっぱい遊んでくれた。


「……サトミはサクラといるときはずっと笑ってたもんね」


 サトミを捕まえていた男はサトミを泣かせていた。あのとき、喋れないことがどんなに悔しかったか。


「……君を守れなくてごめんね。今度こそ、君のことを守るから」


 今は言葉も手に入れた。

 だから、もっとサトミの力になれるよ。


 サトミを温めるようにポテトは寄り添い、眠りについた。


 ☆


 ーーもっと早くに出会いたかった。そうしたら、君を待たせることもなかったのに。


 彼は私のことを甘やかしてくれた。

 かわいい、愛してると甘い言葉をくれた。

 金曜日がいつも待ち遠しかった。

 心も身体も彼を独り占めできる、幸せな1日だったから。


 ーーこれ、受け取ってくれる?

 ーーこれは……?

 ーー指輪だよ。君との約束の指輪だ。

 ーーいいの……?嬉しい……!


 私は愛されてた。

 ねぇ、そうでしょう?


 神様の言葉を認めたくない。

 優しかった彼が私を捨てるわけがない。



 ーーその指輪、どうしたの?

 ーーえへへ。彼がくれたの。約束の指輪なんだよ。

 ーー……サトを選んでくれるのか?

 ーーうん!待っててと言われたの。

 ーー……あんまり、信用するなよ?不倫する人間は信用できないぞ?

 ーー彼は大丈夫だよ!私達は愛し合ってるんだもん!

 ーー……そっか。



 眩しさに私は目を覚ます。昔のことを思い出してボロリと涙が溢れる。


「サトミ⁉どうしたの⁉」

「なんでもないよ、ポテト。ちょっとサクの話を思い出してただけだから」


 ポテトが私の涙をペロペロと舐めてくれる。


「さ、朝ご飯作って町か村を探そっか!」



 私たちは食べられる物を探しながら冒険していく。私には戦う力がないので、かわりにポテトが戦ってくれる。


「あ、村かな?家があるね。行ってみよう!」


 私は民家を訪ねる。が、どこも返事がない。


「……閉鎖的な村なのかな?」

「……サトミ、これ見て!なんか変なにおいがする」

「……水の入った桶?」


 私は能力を使い、その水を鑑定する。


「……毒⁉早く、解毒しなきゃ。解毒方法は……!」


 これだと採取していた薬草を取り出し、民家に入り、薬草をすり潰して倒れている村人に飲ませる。


「……呼吸も脈も落ち着いた。次に行くよ、ポテト」

「ボクに乗って!そのほうが早い!」

「うん!絶対、全員を助けるよ!」

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