彼女の償い編②

「……サク、ばかだよ。私のために死ぬなんて」

「それだけサトミのことが好きだったんだろ?」

「……そう、だね。私、本当にばかだったな。やっぱり遊ばれてただけだったし。殺されちゃったもんね」


 恋は本当に難しい。


「でも、殺されてひとつだけいいことがあったかな」


 私はそう言い、ぎゅっとポテトを抱き締める。ポテトは去年死んでしまった愛犬だ。


「またポテトに会えたからね」

「……こっちに来るの、早すぎだよ」


 ちょっと怒った声のポテトに私はごめんと言いながら頭を撫でる。


「へへ。こうやってお話できるの、なんか不思議な感じだね」

「そうだね。ボクも手伝うから、早くサクラに会おう?話したいこと、いっぱいあるんでしょ?」

「……うん。ありがと、ポテト」

「まずは人間がいる場所を目指そう」

「うん」



 ーー……ここで主が来るのを待つのか?

 ーーうん。たくさん愛してもらったから恩返しをしたいんだ。

 ーー……お前の主は罪人だぞ?地獄行きだ。

 ーーそれでも良いよ。ボクはサトミが大好きだから、一緒に罰を受けるよ。

 ーー……お前に免じて、地獄行きはやめるか。転生させて人助けをしてもらおうか。

 ーー……なんだかんだで、神様も優しいね。ありがとう。

 ーー……優しくなどないさ。


 そう笑う神様は優しい顔をしていた。



「ーーあっちから人間のにおいがする」

「じゃあ、行ってみようか」

「結構距離があるけど、大丈夫か?」

「大丈夫だよ。これでも体力はあるつもりだし」

「疲れたらすぐに言って。ボクの背中に乗せてあげる」

「ありがとう、ポテト」


 私とポテトは歩いていく。


「……ちょっと休憩しようか。この川の水、飲めるよ」


 私は神様に授かった能力で川の水を確認していた。


「ちょっと食べられるものがないか探してみようか」

「じゃあ、ボクは狩りをするね」

「じゃあ、一旦別行動だね」


 私はポテトと別れ、森に入っていった。


 ☆


「すごいね、ポテト!大量だね!」

「食べられるかな?」

「ちょっと能力で見てみるね。……うん、食べられるよ。……この能力すごい。捌き方まで出てきた」

「出来そう?」

「なんとか!あ、でも刃物持ってないや」

「ボクが持ってるよ。神様が持たせてくれたんだ」

「なんだかんだで優しい神様だね」

「うん。ボクもそう思う」

「じゃあ、調理開始!」



 ーー愛してるよ、理実。君を選ぶから待っててくれる?

 ーー待つよ。私はあなたが大好きだから。私にはあなたしかいないもの。


 それは偽りの幸せだった。

 私はそれでも良かった。

 彼の言葉を頑なに信じていた。



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