この世界の歩き方編③

「なんだかんだで疲れたのかしら。眠ってしまったわね」

 一生懸命に小さな身体でブランケットを運ぼうとするブリーゼとミミは交代し、ブランケットをサクラの身体にかけてやる。


「……そういえばミミって何歳?」

「17歳だにゃ。ブリーゼは何歳にゃ?」

「100歳くらいよ」

「ブリーゼは長生きだにゃー」

「まぁ、種族も違うからね。同じ種族だったらアタシが少しミミよりお姉さんになるわ。そうそう、サクラは何歳か知ってる?」

「んー、覚えてないって言ってたにゃ」

「意外と記憶は制限されているのね」

「見た目は15か16くらいだにゃ」

「でも、中身は大人びているわよね」

「確かにそうだにゃ」


 ふたりはサクラを見やる。

 サラサラの黒髪に整った中性的な顔。


「……ふふ。ミミってば見すぎよ。そんなにサクラのこと好き?」

「にゃ!?好きとかじゃないにゃ!」

「そう?じゃあ嫌い?」

「嫌いでもないにゃー!」

「ならアタシが狙っちゃおうかな?」

「にゃ!?それは嫌だにゃー!!」


 堪えきれずにブリーゼはクスクスと笑い出す。素直すぎるミミが何とも可愛らしい。


「ごめんね。からかいすぎたわね。アタシはサクラのことを気に入ったけれど、そういう意味じゃないわ。ミミのこと応援してる」

「にゃ〜、ブリーゼには全部お見通しなのかにゃ?」

「大丈夫よ。サクラにはちゃんと隠すから」


(……垣間見えた記憶に女の子の影があった。たぶんサクラが好きな人であり、恐らく死ぬきっかけを作った人。思い出す隙もないくらい、サクラを夢中にさせてね、ミミ。シルフ様に封印をしてもらうつもりだけど、これだけサクラの気持ちが強ければ封印は続かないだろうから)


 ☆


「……ん……って、え!?」


 目を覚ますとすぐ隣にふたりの寝顔があった。その距離と無防備さに胸がドキドキする。

 寝ているのを起こすのは悪いと思い、そっと寝床から俺は抜け出す。


「さ、朝ご飯は何にしようかな?肉も魚も食べたし、次はお米とか野菜とか卵が欲しいなぁ」


 とはいえ、あるもので食事を作るしかない。

 一夜干しにしておいた魚を焼いていく。


「あ、ミミが取ってきてくれた果物も切ろう。これでビタミンと果糖が取れる!」


 香ばしいにおいにふたりが起きてくる。


「ーーふたりとも、おはよう。朝ご飯できてるよ」


 どんな世界でも変わらないことがある。

 朝食は大事である。

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