新たな命編③

「……今の風は……?」

「魔法よ。……そんなに驚いた顔して、どうしたの?」

「妖精さん、サクラはこの世界の人間じゃないらしいにゃ」

「不思議なことを言うのね、あなた。では、サクラはどこから来たというの?」

「そ、それはミミにはわからないにゃ〜」


 半泣きになるミミにクスクスと妖精は笑う。


「ごめんなさい、意地悪しちゃったわね。まぁ、話は後にしましょう。あなたの顔の怪我を治療しなきゃ。かわいい顔に傷を残しちゃダメよ?そうそう、アタシの名前はブリーゼ。よろしくね」


 俺はブリーゼの言葉に頷き、みんなでミミの小屋に戻った。


 ☆


「ーーなるほど。言われてみれば魔力が感じられるわね。魔法で記憶を封印されているんじゃないかしら。死ねない身体というのは魔法じゃなくて神様の仕業がするけれど」

「ブリーゼはこの魔法を解けないのか?」

「んー、解けるとは思うけれど、あまりオススメはしないわ。少し思い出しただけで“死にたい”と思っているのだから、思い出すのは苦しいのではないかしら。逆に記憶を封印することをアタシはオススメするわ。死を自ら選ぶなんて、余程のことがあったのだろうし」

「せっかく、イセカイテンセイでミミたちと出会えたんだにゃ。辛いことは忘れて、楽しく暮らそうにゃ」


 ふたりの言い分はもっともだ。なのに、心はそれを拒絶している。

 でも。


「……魔法を解いてもらえるかな、ブリーゼ」

「……あまり気乗りはしないけど、わかったわ。でも、ひとつだけ約束して?絶対に死のうってしないって。アタシのせいで死なれては、さすがに辛いもの」

「……それは……善処します。あ、でもどのみち俺は死ねない身体だから大丈夫かな?」

「全然大丈夫じゃないわ。死ななくても、痛みはあるでしょう?心も辛いでしょうし」


 ブリーゼは少し怒っている。これじゃ記憶を戻してはくれないなと俺は溜息をついた。


「ならさ、俺、神様に会って記憶と身体を元通りにしてもらうよ」

「……どうやって神様に会うの?」

「一度会ってるから、また会えないかな?」

「神様が住むという聖域があるにはあるけれど、神様の許しがない限り入れないわ」

「なかなか前途多難だな」

「シルフ様に相談するのが良いかもしれないわね。アタシたちより神様には近い存在でしょうし」

「じゃあ、ブリーゼの言う通りにしようか。ミミもそれでいいか?」

「にゃ!?ミミも一緒に行っていいのにゃ?」

「驚きすぎだよ、ミミ。さっき、子どもに手を出してしまったからここにはもういられないだろ?俺が責任をもって、ミミが安全で快適に暮らせる場所を探すよ」


 その言葉にミミが抱きついてくる。


「ありがとにゃ、サクラ」












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