新たな命編②
「……肉だ。肉しかない」
ミミが出してくれた食事はひたすら肉だった。
「もしかして、魚のほうがよかったかにゃ?」
「いや、そうじゃないかな。せっかくご馳走してもらって何だけど、主食ーー米とかパンはないのかな?」
「ないにゃ。猫には必要ないにゃ」
「野菜は?」
「野菜は食べたらお腹を壊すにゃ」
「……なるほど」
とりあえず空腹を満たすためには肉を食べるしかないらしい。
まぁ、1食なら問題はないがこの食生活を続けるわけにはいかない。
というか獣人の体質は人間ではなく、動物のほうに依存するのか。なら、野菜の摂取は強要出来ないか。職業柄、食事の栄養バランスをどうしても考えてしまう。
「ありがたくいただきます。貴重な食料を分けてくれてありがとう、ミミ」
「……どういたしましてにゃ。人間にお礼を言われるなんて初めてにゃ」
「助けてもらったんだからお礼を言うのは当然だよ。獣人と人間は仲が悪いのか?」
「獣人は野蛮だと人間に嫌われてるにゃ」
「だから、こんな誰もいないような土地に住んでるのか」
「ここでも気に入らなくて、よく嫌がらせもされるけどにゃ」
ミミがそう言うのが早いか、窓ガラスがコツンと音を立てる。
「何だ、今の音?」
「気にしなくていいにゃ。窓にちょっと石を投げられただけにゃ」
「……ちょっと文句、言ってくる」
「いいにゃ、サクラ。ミミが我慢すればいいだけにゃ」
「良くない。出会って間もない俺だけどさ、ミミは良い奴だってわかるから。こんなことされる理由はないだろ?」
ミミの大きな目が揺れる。
「ちょっと待ってて」
ポンポンと俺に頭を撫でられたミミの顔はほんのり赤くなっていた。
☆
「ーーお前らが犯人か」
「わ、獣人の家から人間が出てきた!」
石を投げていたのは子どもたちだった。
「なんでこんなことをするんだ?」
「獣人だからだよ。早くここからいなくなればいいのに」
「ミミがお前らに何かしたのか?」
俺の質問に子どもたちは黙り込む。
「帰れ。もう二度と嫌がらせをするな」
「うるさい!そっちこそ、どっか行け!」
子どもたちは俺をめがけて石を投げてくる。
「やめるにゃ!サクラをいじめちゃダメにゃ!」
「出たな、獣人!やっつけてやる!」
「ミミっ!」
俺はミミの前に出て、彼女を庇う。
「……痛い目にあわないと、わからないか?」
そう凄んではいるが、何の武器も持っていない。
「ミミ、大丈夫か?あ、頬が切れてる。あとで治療するから待ってて」
さて。どうしたものか。
どうやったら追い払える?
何の格闘技も習ってないし、困った。
ーーその勇気、気に入ったわ。アタシが力を貸してあげる。
チリンと鈴の音がする。
ーー風をイメージして。あの子たちを村まで吹き飛ばしてやりましょ。
俺はその声に頷いて、風を放つ。子どもたちが飛んでいく。
ーー初めてにしては上出来ね。
チリンと音がして、そこには妖精(?)が姿を現していた。
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