第3話 ショットガンをポンプしてる女の子はエモい

 リリネは自分の身を俺に捧げてでも子供たちを守ろうとしている。それはかつての俺と同じような心境なのかも知れない。俺だってわが身を顧みないで、人々を救うためにテロリストたちと戦った。まあ結果は散々なものだったけど、リリネにそんな思いはしてほしくない。報われて欲しい。


「わかった。いいよ」


 俺はリリネの方に振り向く。リリネは頬を赤く染めて羞恥に耐えている。バスタオル一枚だけ纏って裸の男に向かい合うのは恥ずかしくて仕方がないだろう。


「目を瞑れ」


「…は…い…」


 リリネは目を瞑って、俺の首に手を絡める。俺の目の前には美少女のキス顔がある。俺はその唇を奪おうと…するような卑劣マンではない。俺は人差し指でリリネのおでこをパチンとはじいた。


「いた?!ちょっとなにするんですか?!」


「くくく。キス顔かわいかったよリリネちゃん。ぷふふくく」


 おでこを抑えながら涙目で俺を睨むリリネ。ちっとも怖くない。むしろ可愛く見える。


「いいよ。今のキス顔に免じて、子供たちは俺が守ってやろうじゃないか」


「え?え?でもいいんですか?!あれ?あの。私のことを好きにしてもいいんですよ?男の人ってそういうのが好きなんですよね?」


「実に魅力的な提案だけど、キミを抱くなら楽しいときに抱きたい。俺は君の曇った顔じゃなくて笑顔が見たいよ」


 俺は笑みを浮かべる。ちょっと前までニートだったのに、いきなり美少女とエッチだなんて刺激が強すぎる。


「笑顔…。こんな世界なのに笑うなんてできないですよ」


「できるさ。こんなくそみたいな世界だけど、きっとキミを心の底から笑わせてみせるよ。そういうのはそれまで取っておこう」


 そう言って俺は風呂をでる。


「あ、あの!」


「なに?」


「笑わせてくれるの、楽しみにしてますから」


 そう言ってリリネは微笑んだ。少し緊張感がある様に見える。いずれ彼女の張りつめたものを溶かしてやりたい、そう思った。








 用意された俺の寝室に行くと、浴衣を着たシャマシュが畳の上に敷かれた布団の上にちょこんと座っていた。


「待ってたわ」


「先に寝ててもよかったのに」


「それでは結婚は完成しないわ」


 それが引っかかるのだ。結婚とは本来もっと手続きを踏むものではないだろうか?


「俺はお前のことをよく知らない」


「私はあなたのことをよく知っているわ」


「お前のことは嫌いじゃないけど、愛してるとまでは言えない」


「私はあなたのことを愛してあげられる」


 話は平行線に思える。だけど譲歩くらいならできる。


「シャマシュ。お前を愛するための時間を俺にくれ」


「なぜ時間が必要なの?私はあなたを愛してる。体がつながればあなたも私への情が湧くでしょう?人間とはそういうものでしょう?時間なんていらないわ」


「いいや。君を知れば、きっと深い愛が湧くはずだ。俺はそっちの方がいい結婚になると思う」


 シャマシュは首を傾げている。


「私が知っている男女の愛情は結婚した後に芽生えるものだったけど?」


「いまはそんな時代じゃないんだよ。それに君の知るギルガメッシュとエンキドゥだってすぐに仲良くなったわけではないでしょう?違う?」


 さっきリリネからシャマシュという神の神話を教えてもらった。


「あら?私の神話を知ったのね…たしかにそうね。あの二人には深い絆と愛があった。それはたしかに時間が育んだものだったわね。ならそれはわたしたちにも当てはまるのかもしれないわね」


 なんかシャマシュが納得してくれたみたいだ。だから俺はシャマシュのいる布団の上に寝転がる。


「とりあえず今日は布団をかぶってお喋りでもしてみないかい?お互いの理解を深めるために」


 でもよくよく考えるとエッチするより、お布団被ってお喋りする方がなんか恥ずかしい気がする。シャマシュも横になって俺たちは布団をかぶった。





 俺たちは互いにいろんな話をした。俺は自衛隊に入ったきっかけを。シャマシュは己が神話を。






--俺は自分が育った場所をただ守りたかったんだ。家族がいて、友達がいて、恋人がいるこの日常を守りたかった。



--私は見送ったのよ。あの子の旅路を。彼自身が見て聞いて得た答えで乗り越えてほしかったから。この世界は価値があるのだから。





 気がついたら俺たちは手を握り合っていた。そして穏やかに眠りについたのだ。














 次の日俺は、JKリリネを連れて道端から拝借したトラックで自宅のアパートに向かった。シャマシュは神社で子供たちの面倒を見ている。


「自宅にエアガン取りに行くんですよね?小型とはいえトラックって必要ですか?」


「それもあるけど、他にも回収しようと思ってるものがあってね。知ってる?この近くに物流の倉庫があるんだよ。多分エアガンの類も出荷前のが山積みになってるはずだ。それを拝借する」


 ちょこちょこゾンビやスライムが出てきて鬱陶しいけど、シャマシュのお陰でチートエアガンをつかえる俺にはちっとも敵じゃない。窓からBB弾をぶっ放してやるだけで、皆文字通り塵になる。


「なるほど。でもトラックいっぱいになるほど必要なんですか?」


「俺だけの分じゃない。子供たちの分もだ。昨日シャマシュから聞いたけど、俺の風は他者に分けることが出来るらしい」


「子供たちも戦えるようになるってことですか…それは」


「わかってる。あくまで自衛用に持たせるだけ。兵隊として扱ったりはしないから安心してくれ」


「ほっ。ありがとうございます。代わりにわたしはちゃんと戦いますからね!!」


「ははは。頼りにしてるよ」


 まず自宅からコレクションのエアガンを回収した。そして次に物流倉庫に行き、出荷前のエアガンを回収することに成功した。ついでに必要な服やら缶詰やらなんやらも回収した。作業が終わるとすぐにトラックを走らせて、拠点の神社に向かった。


「ハルノリさん。なんで男の人ってこういうのが好きなんですか?」


 助手席に座るリリネはエアショットガンのポンプをしこしこひいてはモンスターに向かって撃つ。俺の風の力をリリネに付与した結果、彼女もチートエアガンが使えるようになった。ところでJKがショットガンのポンプをしこしこしてるのってなんかエロい。


「理屈じゃないんだよ。引き金を引いている間はなんかハイになれるんだぜ。ぶっ放すともう最高の気持ちになれる」


「ふーん。そうですかぁ。まあ強いし便利ですけど、わたしはやっぱり刀の方がいいですね。引き金だけ引いてると退屈ですね」


 リリネはガチガチの近接戦闘ビルドのステータスなのだからだろうか。エアガンを撃ってもあんまり楽しそうな顔をしない。きっとこれが男女の壁ってやつなのかもしれない。サバゲーも軍隊も男の世界である。蒸せる。


「きゃー!誰か助けて!お願い!いやぁ!いやぁあああ!」


 走っている途中、女の悲鳴が聞こえた。声のする方を見ると、ボロボロに引き裂かれた制服で走るJKが一人。ゾンビから必死に逃げているようだ。よく見ると制服はリリネが来ているのと同じブレザーだった。


「美登里?!今助ける!!」


 リリネは走るトラックの窓からジャンプして外に出る。


「うわー器用だなぁ」


 そして美登里というJKのすぐ近くに着陸し、周囲のゾンビをかったぱしから切りすてていく。ついでにその時に跳ねるスカートとちらちらと見えるピンクのエロい形のパンツがエモい。


「海自でもあれだけの使い手はほとんどいなかったのになぁ。リリネってなにもん?おっとさぼったらあかんな」


 俺はHK416をフルオートにしてゾンビを掃射する。BB弾がヒットしていくとかたっぱしからゾンビはひき肉になっていく。


「グロ?!威力は抑えめにしとこ」


 そして辺り一帯にいたゾンビをすべて倒した。


「大丈夫、美登里?!」


「う、うん。リリネぇ怖ったよぅ!わーん!」


 美登里はリリネに抱き着いてわんわんと泣く。リリネは心配そうに美登里の頭を撫でていた。だけど俺はそれを冷めた目で見ていた。明らかに怪しい。タイミングが良すぎる。リリネは疑っていないけど、俺はこの状況に警戒をしていた。俺は目を瞑り、周囲に微かな【風】をまき散らす。風はあたりに広がり、物にぶつかって反射する。レーダーのようなものだ。シャマシュとの結婚以降俺は風に関する異能を身に着けていた。そして反応があった。あちらこちらの物陰に潜む剣や槍を持った男が計5人。近くのビルの屋上に弓をこちらに向ける男が1人。間違いなく奇襲だ!


「文句は後で聞く!」


 俺は美登里の腹に向かって思い切りケリをぶち込む。


「ぎゃああ!」


 美登里は吹っ飛んで近くのビルの壁に激突して気絶した。


「なんてことをするんですか!!?」


 リリネは怒って俺を睨んでいる。だけどこのままだと危ない。


「文句は後でって言ったでしょ!!」


「きゃ!?」


 俺はリリネを抱きかかえてその場からトラックの屋根に向かってジャンプする。するとさっきまでリリネと俺がいたところに、矢が突き刺さった。


「え?わたしたち狙われてるんですか?!」


「みたいだな。まずはスナイパーから潰す!!」


 俺は弓矢の射手に向かって引き金を引く。


「ぐぅ!?」


 射手は俺の打ったBB弾に当たり気絶した。そしてすぐにセレクターをフルオートに変えて、物陰に向かってぶっ放す。


「ひゃははははは!いちどやってみたかったんだよね!こういうのをさぁ!!」


 エアガンが実弾銃に勝る点は圧倒的な装弾数である。本来マシンガンなんて実銃では一瞬で弾切れを起こす。だけどエアガンはその何倍もの時間を撃てるのだ。


「うわああああ!なんだよあいつ!?」


「銃?!銃なのになんでこんなに威力があるんだよ!!?」


 ビルの陰に隠れていたやつは壁事ぶっ飛ばし、車の陰にいた奴は車ごと吹っ飛ばしてやり、電柱の裏にいた奴は電柱ごと倒してやった。全員を倒すのまではあっという間だった。


「ふっ!火力こそ大正義!!」


「うわぁ…敵とはいえ憐れすぎ…」


 謎の襲撃者たちの撃退には成功した。威力はこれでも抑えたので、全員生け捕りである。さて、いったいどんな陰謀に巻き込まれたのやら?このアポカリプスの世界で助け合わずに人を襲うやつのやりたいことってのがなんなのかとってもとっても楽しみですぅ!




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ちなみにですが、私の近況ノートに少しだけシャマシュさんがどんな神さまかかいておきましたので、ご参考にどうぞ。

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