七つの不幸の怪

小湊セツ

やめとけって言ったのに

 学院の森の奥に不自然に開けた場所があるだろう? そこには昔、礼拝堂が在ったんだ。今は建物は無くなってしまったけど、かつての祭壇の場所にぽつんと石像が立っている。立っているって言うのは変かな? まぁ、とにかく石像があるんだ。首の無い騎士のね。


 すごく強い騎士だったらしいよ? 血腥ちなまぐさい逸話があったけど詳しいことは忘れた。今重要なのはそれじゃないんだ。――まぁ、聞けよ。

 ええと……どこまで話したっけ? そうそう、礼拝堂跡に石像があるんだ。


 蝋燭ろうそくに火を灯して、その石像の正面から右周りに七回回って、『冬枯れの騎士の挽歌』って歌を最後まで歌い、『お前の首を隠したぞ』と言って火を吹き消す。すると、石像に呪われるんだ。






「呪われた人間は、七日間七つの不幸に見舞われる……それが、アンラッキーセブンの呪いってやつだ!」


 カーテンを閉め切った薄暗い教室の中、二人の友達を前にエリオットは深刻そうに告げて、寒さを堪えるように二の腕をさする。


「それで?」


 嫌な予感をひしひしと感じながら友人のレグルスが問うと、エリオットは勢い良く頭を下げた。


「助けてください!」

「こんの馬鹿野郎が!」

「はぁ〜……」


 いつもは悪ノリする同じく友人のサフィルスも、今回ばかりは呆れた様子でため息をつく。


「だって、こんな詳細に手順を教えておいて、絶対やるなよって言われても、それはもう『やれ!』ってことでしょ!?」

「だからって本当にやる奴が居るか! 七日間不幸を受けて反省しろ!」

「反省してるよ! だから頼むよ。呪いを解く方法は無いか一緒に考えてよ〜!」


 エリオットに泣きつかれ、三人で知恵を絞ったが、即呪いが解けそうな良い案は浮かばなかった。


「誠心誠意謝って、ゆるして貰うしかないね」


 サフィルスの勧めに、エリオットはようやく覚悟を決めた。どこかから調達した酒を持って謝りに行ったのだが、不幸はしっかり七日間続いたのだった。

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