第11話
「ガストン爺さんに作って貰った魔石加工の魔道具のおかげで定期的な収入が出来てお金の心配は無くなりそうだ」
この魔石加工の魔道具は、魔石の大きさを判断し、大きさを満たしていたら、刻印で指定された形に加工してくれる便利な魔道具だ。
魔道具の大きさや用途によって、その魔道具に最適な魔石の形が決まっている。前世で言う規格みたいな感じだ。
魔道二輪に使う魔石の形は長方形に加工して、側面には細長い溝を掘っている。この魔石を魔石投入口に奥まで入れると、中で魔石の溝に綺麗にパーツがハマるようになっていて、「ガチ」っと気持ち良い音がなる。
外す時は横にある突起を押すと、「カシャ」っと魔石の頭部分が出てくる仕組みだ。これがめちゃくちゃ気持ち良いし、カッコいい。
まぁ無駄に拘った訳ではない。これには接点圧の問題があった。動く魔道具の場合はしっかりと固定しなければならないし、ミスリルと触れている接点の圧力を少し上げると出力が上がるのだ。
そしてこの専用の魔石を大銀貨1枚と高めに販売している。しかし、使用済みの同じ魔石を持ってきた場合は銀貨2枚で販売している。
最初は高いが、使用済みの魔石と交換する時はかなり安くなっている。
単純に警備隊に魔道二輪を安く販売した訳ではない。そしてこの魔石が繰り返し使える事はまだ誰も知らない。
つまりある程度数を作れば、使用済み魔石をダンジョンに持ってきて、魔力が回復した魔石を持っていくだけで良いのだ。何って楽な商売だ。はっはっはっ
《マスター。住居スペース20部屋全て完成しました》
「お、ありがとう。ラビ。これでグリンとエリン以外の人も呼んで大丈夫だな」
ずっとダンジョンコアって呼ぶのも不便だったので名前を付けた。安易だけど。
グリンとエリンは定期的にここに来ている。それでも大きい方の入り口から入る格納庫と素材保管庫までしか入っていない。
それでも大分驚いてたが。まず入り口の開け方は、入り口横にある魔力感知の刻印に触れる必要がある。そこで個人をラビが特定して、僕が許可した人の場合は扉が開く。
中に入ると高さ10メートル、横100メートル、縦50メートルの空間に出る。
地面はアスファルトのようになっていて、濡れても滑らないようになっている。
天井と壁は白で、天井が光って光源を確保している。ここで大型の魔道車を保管する。
そこから1番倉庫から10番倉庫の入り口がある。
それとは別に、工房用の区画に繋がる入り口、居住スペースと食堂スペースに繋がるメインホールへ繋がる入り口がある。
勿論全ての入り口には魔力感知の刻印が設置されている。
今まではラビがダンジョンの改装中の為に、格納庫と倉庫以外は入れないようにしていたが、ある程度完成した今なら改装予定の所以外は解放出来る。
外の扉は大きい扉は格納庫へ。小さい扉はメインホールへ繋がっている。
ダンジョンの罠を使う事により、これ程便利に簡単に高度な仕組みを再現出来るとは。
通常のダンジョンコアは思考能力が高くないから、ダンジョンの周囲の環境を真似て作るらしい。だけど僕達には関係無い。自由に作りたいように出来る。
でも外の森の新鮮な空気を再現出来るのはとても助かった。
《マスター。グリン様が入り口を開きました》
「お、じゃあついでに案内してやろう」
「グリン、エリン、他の区画も完成したから使えるようになったぞ」
「お、遂に完成したのか。楽しみにしてたぜ」
「ダクター兄さん、私の部屋も有るんでしょ?早く見たい」
「二人とも落ち着けって。順番に案内するから。先ずは工房区画からだな。ラビ、グリンとエリンを拡張予定の場所以外の利用を許可してくれ」
《かしこまりました。マスター》
「よし、これで二人とも使えるようになったぞ」
二人を連れて工房区画に向かった。
工房区画は床も白く、大理石のようにピカピカだ。
「「おぉぉぉぉ」」
「凄く綺麗な床だね、お兄ちゃん」
「おう。ピカピカだな。でもすぐ汚れそうだな」
「それは大丈夫だよ。ラビが汚れと認識出来る物はすぐに吸収して綺麗にしてくれるから」
「すげー。掃除しなくて良いのは助かるぜ」
「ここは研究施設や製造施設、組み立て施設や執務室、設計室等を割り振る予定だよ」
「つまりここが仕事場になるって事ね」
「そうそう。まあまだ道具も何も置いてないから次に行こう」
「ここが住居スペースの入り口になるメインホールだな。外の小さい方の入り口からも入れるようになってるぞ」
「え?何かめちゃくちゃ広くない?何か天井も高いし」
ここも高さ10メートルあり、天井と壁は白で、床は白と黒のまだら模様の大理石風の床になっている。空間が広いのは、待ち合わせや、交流の場所や、お客を待たせる為のスペースとして使うためだ。
「ここで誰かと待ち合わせしたり、遊んだり、お客を待たせるのに使うんだよ。天井が高いのは解放感のためだな」
「スゴーイ。私がこんな所に住めるなんて」
天井を見上げながら呆けている。ここでの生活を思い描いているのだろう。
「こっちが食堂だな。ま、キッチンとかには既に魔道具とかは置いてあるけど、特に見る所は無いかな」
「後でどんなキッチンかじっくり見せてね」
「ここが男性用の居住スペースへの入り口で、あっちが女性用の居住スペースへの入り口だな」
「へー。男と女で分けてるんだ。もしかして、部屋って一人一つ?」
「そうだよ。家族用の部屋を2階部分に作る予定だけど、そっちはまだ作ってないな」
「遂に私の夢だった独り暮らしが始まるのね」
「部屋は全部同じ作りだから男用の部屋に案内するよ。あ、そうだ。二人とも男用でも女用でも入れるけど、普段は入るなよ。あくまでも緊急に備えて全区画に入れる用にしてるから」
「「はい」」
「ここが住居だな。ここが段差になってるだろ?ここで靴を脱いでから段差を上がるんだ」
「え?家の中で靴を脱ぐの?ベットに入る時だけじゃなくて?」
「そうだよ。健康の為にも清潔な環境で生活してもらうためだよ」
「へー」
「で、ここがトイレで、ここがお風呂だな。トイレとお風呂はもう魔道具を付けてるから使えるぞ」
「部屋にトイレもお風呂もあって、魔道具まで付いてるなんて・・・」
「実はな、この魔道具に付いてる魔石は自動で回復するから使い放題だぞ。あ、これは内緒な」
「「えーーー」」
「あ、だから全部取り外し出来ないように埋め込まれてるのか。魔石の交換しなくて良いなら盗まれない為にも安心だね」
「そう言う事。で、奥に進むとここがリビングだな。キッチンは無いけど、憩いの場だな」
「へー。結構広いね」
「そしてここの扉の先は寝室と客間だな」
「一人でこんな広い所に住めるなんて考えた事もなかったな」
「エリンが嬉しそうで良かったよ。グリンは嬉しくないのか?」
「あ、ああ。嬉しいとかの前に驚き過ぎて言葉が出てこないな。すまん」
「成る程ね。だからさっきから口数少なかったのか」
それから僕達は格納庫まで戻り、昨日完成した大型の魔道車に乗り込んだ。まあ簡単に言えばトラックだな。
森を進む道も完成して、魔道車も走れるようになった。
これで国のあちこちを周り、魔石を買い集めて、鉱石を売り払う商売が出来そうだ。
家に帰るとお爺ちゃんが帰って来ていた。
「あ、お爺ちゃん、はじめまして。長男のダクターと言います」
「お、礼儀正しいな。俺がこいつのオヤジのアビオンだ。まあ好きに呼べ。で俺の隣にいるこいつはエレオノーラだ」
「はじめまして。エレオノーラと申します。ガストン様とダクター様のお噂は伺っております。私はオズワルト商会の商会長の娘になりますが、兄が商会を継ぐ事になり、私は小さな支店を引き継いで新たにノーラン商会を立ち上げました。本日ここに来たのはアビオン殿とのご縁があり、この村に商機のチャンスがあると思い同行させてもらいました」
「まあ小さい支店ばっかりだが、かなりの店舗を持ってるぞ。何よりこいつは信用出来る。何せ商売の為の商会じゃなく、従業員の為に商売やってるやつだからな。だっはっはっ。まあ何か商売やるならこいつの商会を使ってやってくれ」
突然の話で驚いたけど、また渡りに船だな。それにしても、従業員の為に商売やってるってどういう事なんだ?
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