第12話

「因みに、従業員の為に商売やってるとは?」



「はい。私は商売の勉強はしましたが、大きな商会を立ち上げる予定は無かったのですが、兄が商会を継ぐ時に女性従業員は全て解雇し、売り上げの低い小さな店舗は全て売買すると言い出しまして。それで私は父に相談して、女性従業員を全て引き取る事にして、彼女達が働ける場所として小さな店舗は私が引き継ぐ事にしたんです。ですが大口の商売は全て兄が引き継いでいますので、従業員を養う為にも新しい商売を探しております」



成る程。確かに商売は男性がってのはある。取引先も女性は信用出来ないって断る事もあるらしいし。



それにお爺ちゃんから魔道具を送って貰った恩もある。それに商人なら計算出来る人も沢山いるはずだ。



「丁度店舗の多い商会をさがしてたので、ノーラン商会にお願いしようと思う」



「本当ですか?ありがとうございます。それでどのような仕事でしょうか?」



「実は使用済みの魔石を集めたいんだけど、1キロ辺り銀貨5枚で買い取るので、各店舗で使用済み魔石を買い集めて欲しい」



「それだと物凄い金額になりますが、本当に宜しいのですか?」



「良いよ。その代わり色々と条件がある。一つは魔石を集める時は必ず銅貨一枚でもいいからお金を払う事。もう一つは魔鉱石とミスリル鉱石を出来るだけ買い取って欲しい」



「え?もしかして、こちらでは魔鉱石やミスリル鉱石が採掘出来るのですか?」



「そうです。だから定期的な数を卸すので、そのお金で使用済み魔石を買い集めてください」



「分かりました。それで魔石はこの村に届ければ宜しいのですか?」



「それなんだけど、僕が作った魔道車を貸し出すから、その魔道車に鉱石を積んで、各地で卸しながら魔石を集めてこの村に戻ってきて欲しい。勿論荷台にスペースの余裕があるなら他の商品も運んでもいいけど、こちらの商品を優先してほしい」



「ありがとうございます。もしかして、その魔道車とはこの家の隣にあるあの巨大な箱の魔道車ですか?」



「そうそう。運転する時は運転する人の登録が必要だから事前に連れてきてね。それからこの村に来たらそのまま僕の拠点まで運んで欲しい」



「その拠点とはどちらですか?」



「じゃあ鉱石も見せたいし、今から一緒に行こう」



「俺も言いか?」



「アビオン爺さんも良いよ。あ、後グリンも連れてくから少し待っててね」



「それにしてもこの魔道車は凄いですね。人も6人の載れて、後ろの巨大な鉄の箱には沢山の荷物を乗せられるなんて」



「あ、因みに鉄じゃ無くて魔鉄なのでとても頑丈だよ。盗賊が出ても撥ね飛ばせる位」



「ほ、本当に凄いですね」



「もうすぐ着きますよ」



「こんな森の中にあるなんて。あ、あの壁にある扉が入り口ですか?とても大きな扉ですね」



「大きな魔道車も入れるようにしたからね」



僕は魔力感知の刻印に触れた。



「こんな感じで登録した人が触れると扉が開きます」



振り替えるとグリン以外は口を開けて茫然としていた。



そして格納庫に入り、1番倉庫にバックで止めた。



「着きましたよ」



皆口を開けて周りを見ている。



「あ、あの、ここは一体・・・」



「僕の拠点ですよ。この1番倉庫も登録した人だけが開けられます」



扉を開くと巨大な空間に棚が並んでいて、それがずっと奥の方まで続いている。



「こっちの棚の箱には魔鉱石が入っていて、あっちの棚にはミスリル鉱石が入ってます」



「あ、あの、これ全部ですか?」



「今はこの2つの列が魔鉱石で、奥に50メートル位までは入ってるよ。あ、ミスリル鉱石は魔鉱石の半分位かな?」



「はっはっはっはっはっ」



あれ?バグったかな?流石に衝撃が凄すぎたか。



「取り敢えず、ノーラン商会の方は、ここまでは入れるようにするので、運転する予定の人は全員連れてきてください」



ちゃんと聞いてたかな?



次の日には、エリンとエレオノーラさんとで話し合いが纏まり、無事契約することができた。



それからノーラン商会から計算出来る人を10名雇う事にした。エリンにはその10名を纏める仕事をお願いした。



それからノーラン商会には工房施設に必要な機材や、家具や魔道具等も大量に注文した。おかげでお金が殆どなくなってしまった。



その後ガストン爺さんとゴドランを拠点に案内した。此処に住んで良いって言ったら二人とも大層喜んでいた。



それから暫くしてからノーラン商会の小隊が到着した。あと何故かその小隊と一緒にゴドランの弟子も来ていた。



そこからは魔道車を使った引っ越し作業だ。



僕とグリンとエリンも引っ越す事にした。



それからガストン爺さんとゴドランも。



ゴドランの弟子5人もお引っ越し。



それからノーラン商会から雇った10人も拠点に引っ越し。



総勢20人の引っ越しだった。因みにガストン爺さんとゴドラン以外の、初めて此処に来た人達は全員放心していた。



喜んでくれて嬉しいよ。



それから魔道車と格納庫への登録も終わり、無事に魔道車のトラックを3台引き渡した。



ついでに魔鉱石とミスリルも沢山買い取って貰った。昨日までは金欠だったのに、直ぐにお金持ちだ。って思うだろうが、このお金は工房の資金になる。



まあ僕が出したお金は後から返して貰えるが。



こうして遂に本格的な工房が稼働し始めた。



そう言えばアビオン爺さん何も反応無かったな?何しにきたんだ?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る