第10話

「よし、悪路を進む魔道二輪だから複雑な機構は出来るだけ避けてシンプルに作ろう」



「ふむ。それでは作りがいがないのう」



「爺さん、出来るだけ無駄を省くのも技術だよ。それに今回は新しい動力炉を積む予定だし」



「なんじゃと?なぜそれを早く言わぬのじゃ?」



急に声が大きくなったよ。しかもまた目が血走ってるよ。やっぱりギリギリまで黙ってて良かったな。



「だって先に言ったらまた根掘りは堀聞いてきて全然進まなくなるから直前まで話したく無かったんだよ」



「それは根掘りは堀聞くに決まっておるじゃろ。して?どんな動力炉なんじゃ?」



「まあ簡単に説明すると、電気でモーターを回す仕組みだよ。仕組み事態は簡単なんだけど、取り敢えずゴドランさん、こんなの作れる?」



「俺の事はゴドランで良い。これは針金か?それなら作れるが」



「これをこんな風に加工して、こんな形にした物をコイルって言って、これをこんな加工をした容器に、磁石をこんな感じに配置して、そこにさっきのコイルを入れて、ここに雷の刻印魔法を入れて、その電気をここに繋げると、この中のコイルが回るって仕組みだね。これをモーターって言うんだよ」



「また変わった動力炉を作るの。確かにこの構造ならシンプルだが、これでパワーは足りるのかね?」



「その辺りは大丈夫。このモーターは物凄いパワーがあるんだよ。勿論欠点もる」



「欠点とは何かね?」



「まず燃費が悪い。長い時間走るには魔石が大量に必要になる」



「ふむ。道理じゃの。パワーがあるならそれだけ魔力の出力が必要じゃからの」



「それから電気の安定と出力の管理だね」



「ふむ。それでは結局ゴーレムコアが必要にならないかの?シンプルにはなるが、予算の問題もそうだが、何処からゴーレムコアを入手するのかね?」



「これだよ」



僕は机の上に小さなゴーレムコアを置いた。



「これは、ゴーレムコア?それにしても随分と小さいの。こんなもの何処から持ってきたのかの?」



「爺さんには話したと思うけど、僕がダンジョンマスターになったって話はしたでしょ?それでダンジョンコアの力を使って最低限の性能があるゴーレムコアを作ったんだ」



「な、なんじゃと?そ、そんな事まで可能とは。と言うことは、まさか、あれも可能か?それにこんなことも・・・」



あー。何か天井を見上げながら何か言ってる。何かそのまま昇天しそうだから現実に引き戻してあげよう。



「おい爺さん、妄想は後にしてくれよ。取り敢えず、このサイズなら大量に作れるから安く大量に作れるはずだよ」



「確かに。これだけ単純なら俺の弟子達でも作れそうだ」



「あ、それならゴドランの弟子も来たい人はここに呼ぼうよ。どうせ来るのに時間かかるだろうし、それまでに住む場所は確保しておくよ」



「では手紙を出そう」



「と言う事で、この設計図を元に作って行こう」










「って事でグリン、こいつを試し乗りしてみてくれ」



「いきなり呼び出して何が何だか分からんが、良いのか?」



「ああ。別に壊しても良いぞ?試作品だしな」



「よし、任せとけ」



取り敢えず、一通りの操作方法をおしえた。



説明が終わるとグリンが魔道二輪にのり、起動してからアクセルを回した。



「うぉっ。何ってパワーだ。これは負けられないな」



確かに凄いパワーだ。行きなりアクセル全快にしたせいで前輪が浮き上がり、あのグリンが転んだ。



しかし、こいつ何と勝負してるんだ?



「グリン、アクセルはゆっくり回してくれ。まずは安定させる事を考えて運転してくれ」



「おう。今度こそ乗りこなしてやるぜ」



グリンに試験させて良かったな。二輪車は転ぶとマジで危ないからな。



それからグリンには予備の魔石も渡しておいて、暫く練習して貰う事にした。








「使い心地はどうだグリン」



「最高だぜ。もうこんな事も出来るようになったぜ」



すると行きなり前輪を浮かし、その場で回転し始めた。それどころかその状態で移動もしている。



ちょっと参考にならないな。







それから安定性を上げる為に少しタイヤを大きくし、軽くする為に金属部分は全て魔鉄製にした。



いや、だってさ、うちのダンジョン魔鉱石沢山取れるんだよ?ただだよ?だから大丈夫。って事で、魔鉄を沢山使いました。



鍛冶師の仕事も初めて見たけど、あんな風に作ってたんだね。知らなかった。



鍛冶魔法の形成を使うと金属がぐにゃぐにゃ曲がりだし、そこから様々な道具を使いながら目的の形に形成していく。



何か粘土遊びみたいで楽しそうだった。僕が鍛冶魔法を使えないのが残念。



後は電力の安定性を高める為に、電撃を放つライトニングダイルってワニみたいなモンスターの角の素材を入手した。



この角は電気を溜め込む性質がある為、この素材に雷撃の刻印を刻んで、ガストン爺さんにゴーレムコアと錬金術で合成して貰った。



その素材をミスリルの配線で魔石タンクに繋げて、合成したゴーレムコアに魔力量の管理と電力の管理を条件付けして、銅の配線をモーターに繋げて完成。



僕は何もしてないって?ほら僕は設計図書いたし、ダンジョンコアに魔力あげて素材を持ってくるのが仕事だから。



ようやく完成した魔道二輪だったが、一つ問題があった。



運転が難しい。



そこで村の近くにある荒れ地を練習場にした。



そのおかげもあり、元々運動神経が良い警備隊の皆さんは直ぐに乗りこなせるようになった。



これで森の道の整備も早く進むだろう。



そんな時、父さんから意外な報告があった。



「久しぶりにオヤジが帰ってくるらしい」



あの破天荒お爺ちゃんが帰ってくるのか。


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