第9話

「しかし、凄い事になったな。僕がダンジョンマスターか。ダンジョンマスターってなれるもんなの?」



《通常、ダンジョンコアがダンジョンマスターです。よって他の者がダンジョンマスターになる事は不可能です》



「そっか。所でさ、ダンジョンコアってそんなに思考が柔軟なの?ダンジョンって罠とモンスター以外は単純な仕組みが多いから、そんなに知性が高くないと思ってたんだけど」



《それは私がマスターの思念を読み取った事により、高度な知性を獲得した為です。よって通常のダンジョンコアには複雑な思考は出来ません》



「何か凄い事さらっと伝えてきたな。じゃあ今僕が頭の中でイメージしている事も読み取れるの?」



《可能です》



「そっか。じゃあ僕の許可が無い時は伝えたいって思ってる言葉意外の読み取りは禁止で」



《かしこまりました。マスター》



おー。怖い怖い。常に頭の中覗かれてるのは流石に困る。



「因みに、ダンジョンコアって何してるの?」



《ダンジョンの目的はコアの成長と、支配領域の維持管理です。支配領域を広げる事により、より効率的に大地の魔力を吸収し、成長する事が出来ます》



「成る程ね。支配領域を広げる以外に成長する方法はある?」



《主にダンジョン内にある物質を吸収してエネルギーにしています。効率の良い方法は、マスターの魔力を直接コアに吸収させるか、魔石を直接コアに吸収させればより成長可能です》



「お、これは良いこと聞けたな。魔石は使い切った後の魔石でも可能?」



《可能です。その場合は成長効率は100分の1になります》



「それでも使い道が無かった使用済み魔石の使い道が出来たんだ。ありがたい。因みにダンジョンの中はどれぐらい自由にいじれるの?あ、今僕がイメージしてる物を読み取って欲しい」



《了解です。マスター。ダンジョン内の構造は比較的自由に作り替えられます。床や壁の形状、罠等を使った光る天井や動く扉など。ただ資源の生成の場合は自然に存在している状態でしか生成出来ません。精製済みの鉱石や、加工された製品等は作れません。資源を生成するには、一度生成したい物をダンジョンに吸収させる必要があります》



「なるほど。モンスターも作れるの?それと魔石は直接作れるの?」



《モンスターを生成する場合は元となる野生の獣やモンスターを吸収する必要があります。魔石やゴーレムコア等は加工前の状態なら生成可能です。魔石やゴーレムコアを直接生成したい場合は一度、コアに直接吸収させる必要があります。魔石を直接生成した場合、その魔石に限り、このダンジョン内では魔力の自然回復が可能です》



「おぉぉぉぉ。ダンジョンって凄いな。因みに今のエネルギーだと、どのぐらいの広さを改造出来そう?」



《成長と維持に必要な魔力以外を使う計算で、マスターが想像している構造だと、一階部分の約15%が再現可能です》



「え?この構造出来るの?」



《可能です。ただ空間拡張に関しては膨大な魔力を使用するため、現状不可能と判断し、計算に入れていません》



「いや、それでも凄いよ。そうだ。グリンに持たせてた魔道ランタンで使ってた魔石とか、ガストン爺さんが使ってた魔石が大量にあるから持って行こう。僕の魔力も吸収させたいしね。楽しみだ」








「ダンジョンで生成してもらった鉱石も大分貯まってきたな。ダンジョンの修復機能で鉱石が復活するのは凄い。流石にミスリルは復活に時間がかかるな。よし、これらを売り捌いて国中の使用済み魔石を買い漁りたいな」



この使用済み魔石は使い道が無いため、纏めて近くのダンジョンに捨てている状態だ。ダンジョンは何でも吸収してくれる便利な廃棄場だ。近くにダンジョンが無い場所ではお金を出して捨てている位だ。



それならお金を払ってでも僕のダンジョンコアに吸収させたい。そしてダンジョンで取れた鉱石を売って、そのお金で使用済み魔石を買うサイクルの完成だ。



ただこの事業を行う為には巨大な組織が必要となる。



最初は国にお願い出来ないかガストン爺さんに聞いてみたんだが、あまりお勧め出来ないらしい。



もし国にお願いしようとしたら、この鉱石は何処から採掘したのか、どのぐらい持続して採掘出来るのか、使用済みの魔石は何に利用するのか、危険な開発などしてないか、管理体制はどうなっているのかなど、様々な事を調べられるらしい。



確かにそれは困る。



それと同時に、大量の鉱石や魔石を輸送出来る魔道車の開発も行おうとしている最中だ。



それに合わせて、腕の良い鍛冶師や錬金術師に依頼を出しながら、何とか雇えないか思案中だ。



取り敢えず今はグリンを雇い、ダンジョンまでの道を切り開いて貰っている最中だ。



森を切り開く為には村長の許可が必要なため、爺さんと一緒に交渉した。



その結果、道を切り開く際はなるべく木を切らないで済むルートを選び、森の動物達に異常がないか調べながら進める事になった。



意外な事に、道の整備に協力してくれる事になったのが村の警備隊の人達だ。



勿論条件はあった。警備隊の為に魔道車を作って欲しいとの事だった。勿論了承した。



「警備隊用の魔道車の設計どうしたら良いとおもう?」



「ふむ。警備隊の仕事は基本的には村の中の巡回や畑周りの巡回じゃの。それからたまに捜索の為に森の中の捜索もあるの」



「巡回は良いとして森の中か。それなら二輪車とかどうかな?操作は難しいかもしれないけど、悪路に特化したやつなら行けると思うけど」



「二輪車と言えばたまに王都で走っている自転車のことかの?あれに動力炉を搭載するのかの?それで森の中を走れるとは到底思えないんじゃが」



「まあ普通は無理だと思うけど、パワーに特化した動力炉を搭載して、タイヤも大きくして、一緒に作った油圧式サスペンションを改良すれば何とか行けると思うよ。多少の荷物は乗せられるし、無理すれば二人乗りも出来ると思うし」



「ふむ。あまり気は進まぬが作るしかあるまい」



コン、コン、コン



「ガストン爺さん、外からのお客さんだよ」



「ふむ。村の外からかの。一体誰かの?」



「僕が迎えに行ってくるよ」



「頼んだぞ」









「爺さん、連れてきたよ」



「ふむ。確かお主は王都で鍛冶師をしておるドワーフの・・・・・なんじゃったかの?」



「まあ覚えてなくても仕方ねえ。俺はドワーフのゴドランと言う。一応この国の王都で鍛冶師をやってる。失礼なのは分かっているが、今日はあんたに頼みにきた。どうか俺を専属で雇ってくれ」



そう言っていきなり土下座をした。リアル土下座初めてみたかも。しかもゴリマッチョのおっさんの。



「理由を聞いてもよいかの?」



「俺はドワーフの中でもかなり腕が良いと自負している。だからどんな物でも作れると思い込んでいた。だがあんたから依頼された物は精度が悪いと何度も送り返された。正直俺は設計が悪いのに俺のせいにして送り返されてると思ってた。でも違った。完成されたあの魔道車を見て思い上がってた事を理解させられた。あれだけの緻密さだ。生半可な精度では作れない。それでいてかなりの頑丈さで作られている。あんなもん見せられたらもう普通の仕事なんて出来やしねぇ。だからどうか頼む」



「お主の気持ちは分かる。しかしのー」



チラ。チラ。



爺さん。何で俺を見るんだよ。



チラ。チラ。



分かったからこっち見ないでくれよ。



「僕は良いと思うよ。作って貰った中でも一番精度が良かったし」



「ふむ。では契約と言う事で良いじゃろう。後は契約内容を話し合わなくてはの。そうじゃ、ダクターよ、お主エリンも雇いたいと言っておったじゃろ。この契約をエリンにさせてみてはどうかね?良い練習になるじゃろう」



「良いの?じぁあエリンに頼んでみるよ」



「ありがとう。ガストン殿」



「所でお主、王都に住んでおるのじゃろう?それでは遠くてちと不便じゃろう。もう少し近くに引っ越す事は出来ないかの?」



「実はもう荷物も全部持ってきちまってる。契約出来るまで粘るつもりで来たから、ついでにここに住もうと」



「また思いきりが良いのう。拠点が出来るまではここに住むが良い。ここは工房も兼ねておるし、部屋も空いておるしの」



「ありがたい。感謝する」



こうして鍛冶師のおじさんとの話は纏まった。



エリンとゴドランさんとの契約の詰め合わせも上手く行ったようだし、次は魔道二輪の作成だな。


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