8.責任とは…
(2年B組・昼の放課)
誠はでかい本を机の上に開いて読んでいた。
そこに南がやってきた。
南「やぁ」
誠「おぅ」
南は前屈みになって本を見ながら「今日はなんの本を読んでるの?」と聞くと誠は「今日は連帯責任について気になって読んでいたんだ」
南は「ふ〜ん、連帯責任ね、それにしても今度はそれに興味を持つなんて何かあったの?」
誠は難しい表情で「あぁ、あったさ」
南は少し驚いた仕草で「えっ?なになに?気になるから聞かせて!」と誠に顔を近づけると誠は「顔が近い」と少し引き気味になり南は「めんごめんご」と言った。
誠は本を閉じて窓を開けて、外の風が軽く入った。
誠「南はミスをしたことあるか?」
南「ミスって?」
誠「単純なミスは人間なんて完璧じゃないからいくらでもあるけど、例えばチーム連携とかだとどうなると思う?」
南は腕を組んで指を口元に当てながら「そりゃあチーム内で補えばいいけど、責任ってなるとまた話が違ってくるよね? でもそれがどうかしたの?」
誠は首を軽く振って「いや、例えばプロ野球チームとかで1人の選手が上手くいかなくても別の選手に交代はできるだろ?」
南「それはそうね」
誠「でも仕事とかは違うだろ?誰かが代わりになんて甘いことは言えないわけだし」
南「まぁそれもそうというか、さっきから当たり前のことしか言わないのはどうして?」
誠「そこなんだよ、当たり前過ぎてみんなが気づかない奴」
南は驚いた表情と同時に新聞紙に指を指して「あー! 今度は別の新聞!」と言うと誠はニヤニヤしながら新聞紙を開いた。
誠「これを見て」と南に渡すと南は「これって異物混入の問題があった時のマクドナーリドじゃない! でもこれと連帯責任のなんの関係が?」と聞くと誠は「1人のミスや行動で全体の人たちの職が失い、更に信用まで失った、これがなんの意味かわかる?」
南「言いたい事はなんとなくわかるよ? 1人でも欠けたらダメってことだよね?」
誠は苦笑いしながら「ちょっと違うかな、どっちかと言うと1人のミスが全体に響いて信用を無くしてしまう…」と語っているところに廊下には悟が通りかかり誠と南が話し合ってるのを見て過ぎ去って行った。
誠「わかってくれたかな?」
南「う〜んイマイチ説明不足というか例えが分かりずらいよぉ〜」と言った。
誠「まぁ大きな会社は言わば1人の社員はでかい時計の1つのパーツと思って見ても構わないぐらいには欠けちゃいけないけど、連帯責任はまた別物だね、あの1件以来、マックドナーリドは中国での生産をストップさせただろ?飲食ってのも理由の一つとはいえ1人の問題行動で全体も同じことしてると見られるのが信用を無くす怖さだと思うんだ」
南は椅子に座って「それは言えてるね、そういえば前に信用を壊すのは一瞬だ〜みたいなことは話してたよね? あれと関係してる?」
誠は目をキリッとさせながら軽く頷きながら「そうさ、むしろルールが作られてるだけまだマシってことさ、むしろルールさえも作られずに別の存在や人材に任せることだって有り得ることがあのニュースで分かった」
南「なんだか怖くなってきた、ちゃんと働けるかな?」
誠は笑いながら「そんなに怖いものでもないさ、普通にしてれば特に問題は無いが、やっぱり信用を無くして以降は別の人に託して永遠に挽回する機会が得られないこともあるから本当に一期一会だと思うんだ」
南は本を見つめながら「じゃあそれは前に語ったのと同じく縁を断ち切るみたいな流れかな?」
誠「おっ、察しがいいね」と嬉しそうに南の顔を見て言った。
誠も南も席を立ち教室を出ていき、それを那月は壁越しで見ていた。
(職員室・昼の放課)
幸太郎はパソコンをいじりながらコーヒーを軽く飲んでいた。
職員室前の廊下では悟がやってきてドアをノックして入った。
悟「失礼します、2年A組の佐藤悟です」
職員室に数名いるうちの入口近くにいた宮里先生が「どの先生に用があったのかな?」
悟「幸太郎先生に用があってきました」
幸太郎「おぅ元気にしてたか?」
悟「はい、そちらこそ南さんを狙っているロリコンだとは気づきませんでしたよ」
幸太郎はパソコンのマウスを止めて「おい、ここで話すとあれだ、別のところで話そう」とパソコンを閉じて悟を連れて行った。
(体育館裏・昼の放課)
人気の居ない体育館裏に来てた2人。
悟「いくら南さんが可愛いとはいえ帰宅途中の2人を覗き見なんて気色が悪いですよ」と言うと幸太郎は「どこで知った? 誰だ?ん?」と顔を見て必死そうにしていた幸太郎先生に対して悟は呆れたかのようにため息をついて「先生はバレないようにしてるつもりでしょうけど僕が帰宅途中に先生が遠くから監視してるの見えてましたからね!」
(数週間前・帰宅途中)
幸太郎「うわぁその仕草かわいい」
それを編み越しで見ていた悟は「何をしてるんだ?」と幸太郎の見ている方角を見るとそこにはいつも通り誠と南が帰宅している姿を見て悟は「ヤベェやつだ」と言って去った。
(体育館裏・昼の放課)
幸太郎「そんな悟だって美術室で人の作品を壊した癖に」
悟は向きになりながら「違うよ! あれは誤って壊したの! それに謝ろうともしてるよ!」
(2年B組・昼の放課)
那月は窓を見ていると外には誠が歩いていた。
那月は目で誠を追っかけて手を窓に添えて釘付けになって見ていた。
(誠の家・2時頃)
誠の家のリビングでは時計の針は2時を超えていた中、母が洗濯物を畳んでいるとトレイに行きたくなった母は手を止めてトイレに行くとテーブルに置いてあった携帯にはヤホーニュースの通知で「今日の最高気温は35°となります」と表示された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます