第17話 子供の成長

赤ん坊の頃はただただ魔法というかできることを模索していた。

エルデばあちゃんがなんだかんだと世話を焼いて「これは出来るかい?」と質問してそれを行使する。

母のアイザもすごいすごいと褒めてくれたがジャックは「おれもできる!」と顔を赤くして頑張っていた。

シュバルツ兄さんが学舎へ通うために隣街へ向かってもうすぐ3年になる。俺はすっかり歩くことができるようになり会話もそれなりに声が出せるようになった。

ジャックは毎日父親と森に向かうことが多くなった。

初めのうちは一方的にやられていたジャックも必要なことを言われてると気付いたのか父親の話を聞くようになりじゃじゃ馬は身を潜めて背筋が伸びて立派?になったような気がした。身長が伸びただけかもだけど??


シュバルツ兄さんが居なくなった当時はジャックが暴れて父親との稽古という名のシゴキがあってうるさかったが部屋が広いと喜んでいた。むしろそう言い聞かせていたのかもしれないが今は隣街まで行商のトムイさんに連れられシュバルツ兄さんに会いに行ったがジャックは兄さんに会える嬉しさより農村とは別世界の景色に感動していた。

石畳のメイン通路は広く馬車が3台横に並んでも余りある広さで集会場として中央広場には市場が続いて露店も多く自分たちの村や行商でしか知らない世界がジャックの五感を刺激したのか感涙していたそうだ。


「トムイのおっちゃんってすげぇんだな」


「もっと褒めていいんだぞ、ジャック」


手ぬぐいをジャックに渡して頭をくしゃくしゃ撫でて上機嫌になるトムイ。

…ふんっと泣いた涙を拭いて鼻をかみトムイに返すジャックはやっぱりジャックだったと父親談。


なぜ感想なのかというと俺はエルデばあちゃんとお留守番だからだ。1週間の馬車旅はまだ3歳には早いらしくエルデばあちゃんも年なので家にいると話したそうだ。

赤ちゃんから魔法?を使える俺が居るなら心配はいらないだろうとエルデばあちゃんと2人きりだった。

まぁイベントはあったけどね。


ーーーーー


家事はご飯の支度くらいであとは畑の管理に外に居続けたエルデばあちゃんに冷えた水を持って行って休憩がてら魔法?を披露していた。

「いらないものを燃やしたいから火はつけれるかい?」「この水をもう一杯くれるかい?」

「腰が痛くて…この棚の上の箱を取れるかい?」

ちなみに動物を召喚するような魔法は一切使っていない。あの「大口真神様オオクチノマガミサマ」事件からなんでもできちゃうトンデモ魔法は封印していた。発動条件とか無いし封印も自分が思ってるだけだけどウチには頑張り屋のジャックがいるから末っ子の俺はばあちゃん子して楽しく過ごそうと決めた。


3歳の自分に何ができるか考えた結果がこの家族愛だがフラグがなきゃイベントも無いだろうと思っていたのにそれはまだ甘い考えのようだった。


畑でノームさんを追いかけていると村人が村の南に集まっているのが見えた。

その奥から3人が入ってくる。

みんなはその人たちに殴られたり蹴られたり叫び声と共にみんなバラバラに逃げていく。

遠くからはよくわからないけどエルデばあちゃんに伝えようと後ろを振り返るともう居た。


「アルや、賊が来たようじゃよ」


「ゾクって何?」


「山賊とか盗賊とか…あぁ悪いヤツってことさ」


ぇ、そんなこと今までなかったじゃん?!


「どうすればいいの?」


すぐに逃げなきゃじゃない??すっとぼけかましながら賊の数を数えていた。


「賢い子だ、家に隠れるかどこかに逃げなきゃね」


「追い返すのは?なし??」


「なしさ、追い返してもまた来るしもっと人を増やしてくるからね」


「村はどうなっちゃうの?」


「さぁねぇ、あの子らが帰ってくる村があるかどうか」


寂しそうな顔して俯く。


「ボクたちはどうなるの?」


「見つからなきゃ生きられるけどねぇ」


ほら。と指をさす先は村人の男性が大きな曲がった剣で斬られて跪き肩から血が出たのか片手で押さえているが急激に服の色が変わっていく…。


こういう場所って平和なイメージだったけどなんだ。


手を引き逃げるようエルデばあちゃんが引っ張るがそれを振り解く。


「ばあちゃんは家に居て。」


「なっ、アル!…アルや!」


静止を無視して振り返らず斬られた人の近くに行く。


「なんだなんだ?ガキが走ってくるぞ」


「そのまま斬っちゃえ、お頭!」


笑え声がこだまする。

右手を布でグルグル巻きにして走る速度は変えない。


「おらよぉぉ!!」


バットのスイングのように水平に俺の首目掛けて刀身が近づく。


バシッ


力がかかる前に刃の根元を右手で掴んで左膝を上げて挟み込む。


パキンっ


左手チョップで刀身を折りそのまま右足を大きく振り上げお頭と呼ばれてた相手の首に脚を回して勢いそのままに回転しながら首を支点にしてぶん投げた。


体格差があると昔テレビで見たプロレス技が冴え渡る。


周りが呆気に取られるがお構いなしに次の一手!


「ノームさん!こいつらを首だけ出してあと埋めて!!」


ズズズズ…


「な、なんだっ?!」


「ぐぁ!」


「おい!どうした!」


「うぁ!!」


「おじちゃん大丈夫?」


「お、」


「お?」


「お、俺はまだお兄さんだ…」


まだ元気そうだ。

さっき使った布で肩の部分を押し当てる。

賊が何か叫んでいるが今はそれどころじゃ無い村のみんなも状況を遠くから見ていたのか近づいてくる。


「斬られてるから早く医者に」


「この村に医者なんていないんだよ」


「じゃあ水とお湯を!この服も脱がさなきゃ」


何をしているのか分かってくれた女性が1人また1人と手を貸してくれる。


「綺麗な布用意できますか?」


「何枚かあるわ」


「助かります!治療薬何か持っている方いませんか?」


「今持ってこさせてるよ、アル坊」


「村長ありがとうございます」


「この人たちお願いしていい??」


首だけ出てる賊3人が恐怖に染まる。そのままでもノームさんが見張ってるからいいんだけど村長に任せて逃げちゃおう。


「あい、任されよう」


あれ?心の声聞こえてる??


「お願いします!」


なんとも変な空気になりつつ斬られた怪我の治療へ。


「ぁ、ばあちゃんにもう大丈夫って誰か伝えてきてくだ…」


「聞こえてるよぃ」


もういる?!


「孫が賊に走って行くんだもの…心臓に悪いったら無いね」


徐々に近づいてくるエルデばあちゃん。

ニコニコと口角だけあげて目が笑ってない?これは!


…さぁ説教タイムだ。






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