第16話 兄さんの巣立ち?

時は変わり夕方前。

行商の到着で村のみんなは活気付いていた。

何年もの間、この村に種子や生活用品・仕事道具や嗜好品を届けに来てくれる生命線は春と夏と秋の年3回で冬は来ない。生まれたのは冬なので今回は初めて行商人というムキムキマッチョに出会った。


「皆さんお待たせしました〜!配達の品や書類はこちらから尋ねてください!リストもあるので確認お願いします〜」


到着した行商の先頭でマッチョが叫んだ。


「おっしゃあ!」


ジャックはダッシュで皆が集まってる箇所に割って入り消えていく。シュバルツ兄さんもソワソワしながら向かう。手が震えてる?


街から村へは歩いて1週間程度。馬車なら3日で来れるが例えば村人が街へ1週間かけて向かっても魔物の撃退しながらは難しく孤立してしまう可能性があるため街に行きたい時は行商と共に戻り道を同行するか移動要請の手紙を行商に渡して次回の時に返事をもらうのかは何ヶ月単位で待たないといけないらしく、冒険者になりたいジャックは街の冒険者組合に手紙を出して「またダメだった」と行商人から渡される手紙を母親に渡して読んでもらい落胆していた。

内容は“父ちゃんを倒せるようになったらな”だそうで?早速父親に向かって生成した土の棒を持って走っていった。


行動力ハンパないな…。


シュバルツ兄さんは手紙を自分で読んで喜んでいた。

母親も気になるのか隣から覗き込む。


「えっと、学舎に行けるそうです」


照れながら母親に報告するシュバルツ兄さんは本をずっと読んでいたから勉学が好きだとは思っていたけど仕官になりたいと心に決めて本を貸してくれる村長に伝えてみたところ仕官として教養は必ず必要になるから学舎に行くことを考えてみなさいと言われて本格的に村長のところで勉強しに行っているのを何度も見ている。

なんせ勉強のしすぎて本を開いて寝ていることがあって家族で迎えに行ったことが昨日もあったからだ。

文字の読み方から書き方はほとんど出来るらしく学舎への手紙も自分で書いたほどだった。


まだ若いのに頑張り屋さんだなぁ。

ジャックときたら…ジャックも頑張り屋か、直向きが眩しい。


そうそう、猪事件で警戒のために農器具だけじゃなく武器もお願いしたら途中でもし賊が現れて持ち逃げされたらって可能性があるらしく運搬はできないと断られてたっけ。


行商人のトムイさんはマッチョで威圧がすごいけど仕事をテキパキこなして仲間と共に設営していくテントは露店も兼ねてる優れ物だ。


販売は明日からだそうだが来村記念で今夜は飲み会があるそうでウチからは父親だけ参加する予定だ。

火を灯して机を並べているのが見えたが家に着いて就寝時間となった。


シュバルツ兄さんは母親と話をしながら泣いていたが何かあったのかな?声がだんだん小さく遠くなる。


zzZZ


—————————


「ぇ!やだやだ!!」


「ジャック、兄ちゃんのやりたいことが街で仕官ってのになることなんだよ」


「トムイの奴が街まで連れてってくれる。その後は村長の従兄弟が住まわせてくれるそうだから心配ないさ」


「会えなくなるじゃん!」


「こっちからも街へ行けるんだから大丈夫」


「手紙書くからね、ジャック」


「でもマナビヤってとこ行ったらもうここには帰って来ないんじゃないかっ!」


「そんなことないよ」


「会いたくなったら行けばいいさ、行くんだろ?冒険者になるんだもんな」


「ぁ!そっか!!じゃあいいよ!」


親子は腕を組み合い力んでいた。

ジャックはオデコを腫らして爽やかに笑う。


「支度しなきゃね」


母親は顔を伏せて立ち上がるが寂しそうな顔をしていた。シュバルツは10歳、まだまだ子供なのに自分で行動している…。

ジャックも夢があり目標は父親を倒すことだと息巻いて毎日を過ごしている。自分の前世を思い出してみてもそこまで明確に夢や目標があっただろうか?むしろ今世こそはと思うべきか。赤ちゃんだから伸び代しかないもんね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る