第14話 兄弟は魔法を使う
「ねぇ〜!!ねぇ、いいでしょ??」
母親にすがるジャック。
あの猪の件からずっと母親に魔法を教わりたくて腰紐を引っ張っている。
「はいはい」
母親はマイペースにジャックを受け流していた。
「まずは畑に行ってそこでね」
頭をぽんぽんとされジャックは照れを隠して言う。
「それだと畑仕事じゃんか〜」
「ジャック、いいから行ってこい。母さんが魔法教えてくれるって言ってるぞ」
母親は畑(広い所)で魔法を教えようとしているがジャックは惑わされない。毎回畑に行ってもただの手伝いで終わってしまうのを知っているのだ。
「ほらほら、準備してね」
長男のシュバルツも畑仕事に追われ自分で準備して、ジャックはイヤイヤながらも支度を始める。
「アルは父ちゃんと行こうな」
えぇ…父親は臭いんだよなぁ。
若干渋っていると顔に出ていたらしく母親に俺臭う?と質問していた。母親は苦笑して服を洗濯しますねと目を見ず言うと父親は少し凹んでいた。
・・・・・・・・・
「じゃあ!ここからね」
苗植えは終わっているが育てていると雑草が芽を出す。
それを根気よく抜いて土の栄養を奪われないようにすることが良い野菜への近道だ。
母親は慣れた手つきで雑草を抜いていく。
ジャックは同じく早く抜こうとして根っこが残ってしまう。
「上に押し上げるように考えて魔法で土を動かすとね」
ほら!と笑顔でジャックに見せる母親。
イメージだ。土が隆起して雑草が押し出されているのが分かるがジャックの頭に???が見える。
まずは基礎から〜とか魔法でお馴染みの練習はなし。
実戦あるのみだが父親も出来ないようだし、どうやらジャックに魔法は難しいようだった。
「む〜り〜」
両手をあげて畑に倒れるジャックは汗だくだった。
がんばったのにね。
「ゆっくりやっていけば良いのよ」
「イヤだ!母ちゃんみたいに魔法使ってあの猪を倒せるようになるんだ!」
「おぉ!いいぞぉ〜父ちゃんも応援してる」
ジャックはヒョイっと持ち上げられ畑の端で降ろされた。昼にはまだ早いが小休憩のようだ。手拭いを濡らした母親は土だらけのジャックの顔を拭いて頭を撫でる。
「逃げてね?母さん達は子どもが危険になる方がイヤなのよ」
心配ってお互いが大事だと思わないと成立しないからいいもんだよな〜。
「じゃあ!あの猪より強くなるよ」
ジャックはわかってないんだよなぁ。
親は子を、子は親をというのが当たり前だけど改めてこの家は喧嘩もなく暖かい――――
zzZZ…おっと春だからか。
ウトウトしているとジャックが草を投げてくる。
集めていた雑草をクッションにしていた俺が悪いんだけどね。
ジャックはこちらに気づくこともなく雑草取りをしてブツブツ独り言を繰り返していた。
母親はそれを黙って見つめているとジャックが触れる土が少し動いているのがわかる。
少しずつ少しずつ何かを掴んでいるようだった。
普段は根を上げて父親にゲンコツをもらうまでがセオリーだったが今回は本当に集中しているので父親もそっと見守っていた。そして、
ぽわっ
寝た。
集中し過ぎて体力の限界がきたみたいだ。
「これは合格?」
父親は笑いを堪えていた。
「もちろん合格です」
母親は笑顔でジャックが抜こうとしていた雑草の根っこが土が分かれたことでむき出しになり簡単に摘めた。
土の操作は初めに比べて上手くなっていたが長時間の魔力操作に体内魔力量がちゃんと失くなりそのまま尽きて寝てしまったようだった。
父親はジャックを持ち上げ家に戻る。
母親は畑の続きをしようとして後ろから服を突かれる。
「母さん、僕も魔法使えるかな?」
「もちろんよ、母さんやジャックのやり方は見てた?」
「うん、雑草の周りの土に呼びかけてるようだった」
「あらあら、じゃあやってみてくれる?」
「うん」
その場に座り込んだシュバルツは両手を土につけて声をかける。
「ノームさんノームさん力を貸して、雑草を抜いて野菜を育てたいんだ」
ポン
ポンポン
ポポポポン!
言った側から野菜の苗以外の草がその場に倒れ込む。
近くの雑草というわけではない。畑一面に生えてしまった雑草は瞬く間に土に呑まれ肥料となって姿を消した。
作業終了である。
「ありがとう」
「んまぁ!」
畑は苗だけが残り母親は驚きシュバルツを抱きしめて喜ぶ。シュバルツは照れて途中から嫌がった。
思春期か!
しかも魔力切れなし?
天才かよ、兄ちゃんすごい!
それに比べてジャックは〜。
頭の中でジャックをディスっていると
「僕はノームさんにお願いをしただけ、ジャックは土を自分の魔力で動かしてた」
シュバルツは鼻先を指でかきながら言う。
「魔法にも種類があるのよ」
Vサインをシュバルツの前に出して母親は説明する。
「私やシュー君の魔法は精霊にお願いする精霊魔法でジャックが使ったのは自分の魔力を操作して行使…使えるようにする行使魔法っていうの」
「精霊魔法は対価…代わりになる何かが必要でその時々に契約…約束をするのよ」
「えっ!僕何も約束してない」
「ふふ、それに見合った約束だから今回は先払いしてたのかもね」
頭を撫でる母親を嫌がらず素直に聞いていたシュバルツはハッとして照れて距離を取るのだった。
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