第13話 猪反省会
ピンポーン
「はいはーい」
元気な神様が玄関を開ける。
反省会に来た俺はマンションの一室に招かれた。
「夢なんだからもうちょい非現実が良かったな」
「キミの家じゃん」
ダイニングで両手を広げる神様は甥っ子が突然遊びに来てワクワクしてるようだった。
「ですよね。なんか見覚えのある風景…」
当時のテーブルもイスも、使っていた家具はどこかキレイになっていた。
「掃除は済んでますよ」
あの時のおじさんだ。
バケツと雑巾が神様とは不釣り合いだがありがとうと素直に頭を下げる。
「あぁ…そりゃどうも」
「アラフォーの一人暮らしって殺風景だけど物が溢れてるよね」
大量の服は学生時代から着れるまでと決めて二十年以上着れてる物もある。今はもう赤ちゃんなので着れないというか持っていけない。
「捨てられない性分なんですよ」
「断捨離は大事だけどタイミングがあるもんね」
「さてさて、お待たせしました」
掃除用具を片付けていつもの和服でイスに腰掛ける。
「まずは!」
「 お疲れ様でした 」
注いでくれた冷茶を上にあげて乾杯する。
冷蔵庫もそのまま使えるって便利だなぁ…。
「生き延びたね」
「えぇまぁ」
「ワンちゃん良かったよ!ワンちゃん」
当時の映像を目の前で見せてくれる神様がすごい笑顔で伝えてくる。
「ボクが倒せるって言ったんだけどさ、武器とかで攻撃するって思ってたから感心しちゃった」
「考えたけどまだ赤ちゃんですから…かと言って他の人を強くしちゃうと毎回その人を頼っちゃうって思いまして」
「ぁー確かにアテにしちゃうかも」
「村人ですからね、無理させて何かあったらヤダなと」
試行錯誤中のことを神様に話していたがどれも出来たのでは?と立ってるものは親でも使え的なことを言ってくる。
「あぁそうだ、その指輪忘れないでね」
「狼出した時、コレがすごく熱くなったんですよ」
右手にキラキラ光る指輪を見て言う。
「あはは、ボクと繋がってるからね」
トントンと自分の胸を指す。
なかなか非合理なやり方だったが納得がいった。
「アル君にはあちこち行ってもらいたいんだけど赤ちゃんのうちにこの力が使えるのなら問題ないね」
「むしろ赤ちゃんだから家にずっと居ても何も言われないだろうし」
…引き篭もり??
「ニートだね、アル君にはニートでは無く
「はい」
神様が薄笑いを浮かべてこちらを見ている。
あまり考えず返事しちゃダメだよとかよく上司に言われたなぁなんて考えてたらやっぱり生返事していたらしい。
「お、じゃあ決まりだね」
ポンと肩を叩かれたが痛みはない。神様は覗き込み囁く。
「そゆことでこれからも頼むよ」
「あわよくば前任者のカケラもね」
ぇ?なになに??
前任?なにそ
最後まで言えずにその場から急に離れだす、
明るく遠ざかる神様に疑問だけ残して目が覚める。
実際の赤ちゃんに戻ると指輪は消えていて小粒なおててがあるだけだった。
夕方から夜になる頃。
辺りは静まりかえっていた。
母親がアルの近くでウトウトとしていてエルデは竈門に火を焚べようとしていた。
「おやおや、お目覚めだね」
エルデはアルの頭を撫でて笑顔だった。
いつもは少しおっかなそうだけど今日はそんなことはなくトゲが外れたようだった。
「今日はすごい体験をしたねぇ、生きとるのが不思議なくらいさ」
俺が寝てる間に何かあったのかな?
「あ…れ、寝ちゃってた?」
母親が頭を上げて首を傾げる。
アルを見てる母親はまだボォーっとしている。
「アイザ、寝てていいよ。今日はありがとうね」
「うぅん、母さんが無事ならいいのよ」
「まったく、自分の子に守られちゃうようじゃ歳をとったもんさね」
やれやれとため息をつくエルデ。
どうやらあの時、エルデを守ろうとして母親が猪の前に出たのか。しかもみんなの所へ行かせないために道まで塞いだってこと?すごいな…。
前世でアニメやドラマで見た命懸けをまさかこんな真近で見ることになるとは思わなかった。
神様の言葉も気になるけど今はこの村を平和で住みやすい環境にするのが先決だよね、またあの猪来るかも知れないし。
こうして村平和に目覚めたアルは神様からもらった指輪を思い出しつつなにができるかを模索するのであった。
草木が暖かくなる気温と共に茂る。
昼間は暖かく朝と夜がまだ寒さで震える季節にアルは1人、早過ぎた睡眠で真夜中に目が覚める。
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