第12話 即席にしては上出来
う〜ん?
例えばですよ、視界がクリアになって主人公であれば颯爽と駆けつけて一気に成敗するっていうのがデフォルトなんだろうけどこちとら掴まり立ちがようやくできるようになった赤ちゃんだからどうしたもんか…。
ーーーハッ!(シュバッ
あかん。
母親の近くにいる猪に向けて手をかざすけど何も出ない。もう母親はロックオンされているのでジリジリ後ろへ後退するが崖が近くなるだけだ。
「アイザ!!アイザ!!」
「あぁっもう!!」
父親は混乱している。
猪ってどうすればいいんだろう?
・猟銃
誰が撃つんだ…。
・罠
もう遅い
・天敵
どこにいるんだよ
…ん、天敵??
それだ!頭の中で猪の体より大きく鋭い牙と集団で狩りをするあの動物を急いで
「え」
「なっ?!」
想像から創造へ。
周りが驚きに包まれる中、自分が想像できる天敵“狼”を出現させる。狩りをするというよりご飯を見つけた時のようなまん丸の目をして嬉しそうだ。
思えばそれがカタチになるってすごいな。
なるほどコレは神様が言っていたイージーモードか。
まぁ、あとでそれは考えるとして今は
間合いをとって婆さんと母親が逃げる時間は稼いで父親が合流できれば大丈夫かな?
う〜ん、いっそ…噛みついて追い返そう。
カプッ ペッ
一瞬で猪の側に近づき口を大きく開けて猪の背中に噛み付いた巨大な狼はそのまま猪を咥えて持ち上げ地面に落とした。
ドフっ
猪は自分が持ち上げられたことに驚き地面に落とされて困惑しながら後退りした。
母親とエルデは腰が抜けて声が出ない。
猪がよほど怖かったようだ。
父親は2人を連れてその場から離れようとしていた。
足がガクガクしてる。
もしかしたら崖から飛び降りた時に足を痛めたのかもしれない。
もうひと押し!
アルはそう考え猪に狼を前進させる。
そして今駆けつけました!と言わんばかりにもう1匹の同じようなの狼をそばに
雪のように白く輝く狼が2匹。
大きな猪に対抗できるようそれ以上に大きく出現させた狼は凛々しく神秘的だった。
吠えず威嚇もしないその巨大な狼は父親たちを背にして猪たちと対峙する。猪は諦めてはいない。
目の前の狼に突進をかけようとコースを決めて走り出す。
!!
あっぶね。
ビタンッ
狼の前足で突進は届かず地面に体を押さえつけられた。
それを見ていた他の2匹の猪は後ろへ振り返り一目散に森へ帰っていった。
ピッピギィっ
倒された猪はすぐに起き上がったがどう見ても弱腰に変貌していた。一歩狼が歩を進めると後退、そのまま後ろへ向き直し脱兎の如く走り去っていく。
猪のくせに。
ふぃ〜。
なんとかなったね…即席にしては上出来だな。
村の柵は一部壊れてしまったが他は無し。
家族の3人が怪我をしているが問題ない……
きっと。
北国では気候と野生動物たちで危険がいっぱいだがこのイージーモードに気がついたらきっとどこでも住めば都になりそうだ。
魔法が使える異世界はなんでもありの創造世界。
人の成長を願った神様はどこまでを所望しているのかは分からないけど頑張ってみようと猪を追わせていた狼を消した途端の眠気に抗えないアルなのであった。zzZZ
・
・・
・・・・
「クックック、ワンちゃんいいね」
(そりゃどうも。反省会は夢でいいですか?)
「もちろん」
ジャイアントボアが去った後、母親は大地に呼び掛け崖になっていた部分を以前のような坂へ戻した。
母親が実際に魔法を使っているところを見たのは初めてだった兄弟はボアの恐怖より魔法への興味が強くなってしまった。
「母ちゃん!スゲェ母ちゃん!スゲェ」
「うるさいっ」
ゴンっ
「!!いってぇ」
社に隠れていた村人達は安堵したが知らせに来てくれた社の外にいた兵士たちと村の男衆は呆然としていた。あの猪よりも大きな獣がこの村の近くにいたのだ。姿は無く説明もできないが村の男衆は口を畏敬の念を込めて揃えて言う。
「
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