第11話 これが魔法!
ジャックは思わず父親にしがみついた。
よく集まって遊んでいた村を囲う柵、いつもは飛び越えられないかシュバルツとジャンプして遊んでいたジャックにとって飛び乗ってもぶつかってもびくともしなかったあの柵が簡単に壊され埋め込んだ支柱が抜けて近くの家屋にまで飛んでいた。
しかもその大きさの猪が1匹ではなく3匹。
村の住民は大きな音に驚き村を見ていた。
2匹の猪は周りを見渡すと何も反応がない村の外周を回りはじめた。
…何か探してる?
最初に柵を壊した猪は息が荒くその場で居座っている。
2匹は嗅覚で探しているのかだんだんとアルの家に近づく。
父親が前のめりで自分の家を見守る。
そこにも何も無かったのかさらに
「チッ こっちへ来るぞ!」
「おいおい、冗談だろ」
「男衆は皆を守るぞ!社へ避難しろ」
後ろへ振り返り村人たちに必死な顔で父親が伝える。
クワや棍棒を手に持った村人達が前へ歩みを進める。
「父ちゃん、俺もやるっ」
ジャックは手に石を握って戦う姿勢だ。
その後ろにシュバルツも続きこの兄弟は肝が据わっていた。だが父親は自分たちも子ども達もそれが無謀だと分かっていた。
いつもジャックを止めていた母親は何故か止めに入らない。
あれ?いない??
父親の肩にいるアルはキョロキョロと見渡したが見つからない人物を呼んだ。
「マ..マ...?」
「なっ!?おい!!アイザはどうした?」
「あれ?いない??」
ジャックは確かにと同じく周りを見渡す。
ゴゴゴゴゴゴ
すると地響きがなり、坂が大きな崖へと徐々に変貌する。高さ5メートルは越えていた。村に戻る道が滑落して岩が剥き出しになる。
これが魔法か!
アルは興味津々で形成されていく崖に釘付けだ。
目がキラキラしている息子とは違い魔法を行使している相手を想い冷や汗が流れる。
「あのバカ、シュー!こいつを頼む!オルガ!わりぃが社の門番頼んだ!!」
アルを手渡され戸惑うシュバルツ。
「うん、ジャックこっちへ…」
「ぇ なんで母ちゃんがあんなとこに?」
眼下に見えるのは座り込んでいるエルデと猪の動向を見つめるアイザの姿があった。
??
状況が掴めなかった。
母親が猪と対峙していたのだ。
父親が叫んでいるが怒気が強い。
「・・・ッ!!・・・・!?」
声がうまく聞き取れない。
大きな猪で母親と比べると二回り以上も体格差がある。
突進でもされたらトラックで轢かれるくらいの衝撃がありそうだ。
ヤバい。
ヤバいヤバい!!
父親は崖を飛び降りてアイザに駆け寄ろうとするが後から来た2匹の猪がすぐそこまで迫っている。
<<< ダメ! >>>
声にならない想いだけが口から出た。
ピタッと時間が止まる。
完全停止だ。周りの景色も空気も違うようで呼吸できているか不安になる。耳鳴りが小さく続き裸足の足音が近づく。
「…やぁ」
(久しぶり?ですね)
「まぁ夢以来かな?」
「毎回夢で会ってるんだけど今回は想いが強かったからね」
(今ちょうどヤバい状況でして)
「うん、知ってる」
「このままだと君は赤ちゃんにして両親が亡くなる」
「ハードモード?になるかな」
「君も生き残れるか微妙だ」
「たぶん君の兄弟がなんとかしようとするけどね」
(それは決まってるんですか?)
「いやいや、ボクの希望とは違うからね。成長だよ。」
(成長?)
「そうさ、ここの子たちは地球と違って成長しないんだよね」
(ハードモードならイージーモードにしたらどうですか?)
「実はもうかなりの期間イージーモードなんだけどね」
(この状況で?)
「そう、この状況でさ」
………。
嘘でしょ。
「いや〜本当なんだけどね」
やっぱ心読めるんですね。
「ボクは神様だからね」
(人間があの猪倒せるんですか?)
「余裕だね」
(即答ですか…。何か武器は?)
「ぉ!それだよ!まだまだ諦めてないじゃない」
「寺川…ううん、アル君をこっちに連れて来てよかったよ」
ビシィっと人差し指で指されてしまった。
すごく嬉しそうだ。
「地球の人間達は諦めない」
「何があれば何をすればとかね。一発逆転とか」
「そこでアル君」
「君はどうしたい??」
首を傾げて聞いてくる神様。
答えは決まってるけど一応声に出しますね。
(家族を護りたいです!)
伝えた時に神様が笑顔で俺に近づきハイタッチをした。
右手の小指がやけに熱い。
周りが白くなり自分の影すら消えて行き元の時間に戻ってきた。
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