第10話 猪散歩?
時は少し過ぎて春になった。
雪は溶けて緑広がる大きな山脈が村を囲い込むように続いて空は青く晴れて気持ちの良い風が吹いていた。
畑には芽吹いた苗を一つ一つ植えていく様子を母親と眺めている。何故か朝から元気に苗植えをする父親は勇ましくカッコよく見えた。
ジャックは何気にコツを掴んでシュバルツから苗を受け取り二人三脚で対父親と競争していた。
しばらく見ていた時に聞き慣れない音に気づいた。
「なんだ??」
父親は立ち上がる。少し離れた場所だが人がバラバラに走っているのがわかった。
こんな静かな村に統一された金属の胸当てと鉄甲を付け、重そうな膝まである防具足で全身を固めた一団が村の広場に次々と入っていく。
「何かあったか?」
隣人のオルガが父親に尋ねて、あれ。と指を刺す。
「どこかの兵士?」
「あぁ、何もなきゃいいが…」
そう言うのやめよ?
まだ赤ちゃんですよ、何も出来ませんよー??
アルは母親の服をギュッと掴む。
それを見ていた母親が大丈夫よと上から手を重ねる。
騎馬はなく歩兵のみで形成されていたがどうも動きがぎこちない。広場に着いた人々は座り込み、その場で倒れる者もいた。
1、2、3…4人の兵士?は村長を探しているようでその中の1人が村人に声をかけていた。
「ちょっと行ってくる」
「はい」
阿吽の呼吸?オルガも「はいよ」と言ったが
「一緒に」
「げぇ」
ガッツリ首をホールドして父親がオルガを連れて行く。
「父ちゃん、俺も!」
ジャックは行動力すごいよね。ほんと。
「皆と一緒にいろ」
スパンと断られたジャックは不満げで返事をしなかった。走ってその場所に向かう父親たちをただ見ている。
「苗植えしちゃおうか、もうちょっとだし」
母親は振り向きアルを畑に下ろして作業の続きを兄弟達に告げた。
俺も!って無理か。
その後も村人が集まっていき兵士と少し話したと思ったら各家に戻りそれぞれの家族がアルの家付近までゾロゾロと集まっていく。
畑の苗植えはまだ終わっていないが父親が言うにはここから少し北西に行くと北の街ロックハーバーがあってそこの訓練兵士が来ていると言う。兵士が教官の指示でこの村に来たのだそうだ。
・実地訓練で新人兵士が森に入っていた
・2日後に街に戻る予定だったが大量のボアと遭遇
・兵士見習いが手を出してしまい逆に襲われた
・沈静化できず撤退
・兵士教官から近隣の村へ避難指示の伝達
訓練ではない為に兵士達の被害も少なくはない状態で隊列を組んでも薙ぎ倒され逃げるように兵士達は来たそうだ。遭遇場所から1番近いこの村は東の山へ向かう途中にある社まで避難すると村長が決め、緩やかな坂道が続くこの村は小さな川がすぐ横から流れていてその川沿いにあるエルデがよく向かう社まで移動することにしたのだという。
「必要な食べ物だけ持って動いてほしい」
「一応今日は社で過ごすことになると思うが」
「苗はどうする?」
「とりあえず持てるだけ持つか」
ウチのとこはまだ少し植えていない苗を手で持って兄弟が張り切る。
「向こうまで競争な!」
「先に行くなら荷物を持てって」
父親が食料を担いでりんごを2個投げて受け取らせる。
ジャックは肩掛けカバンの中に入れてまた走り出す彼はもう誰にも止められない。
それに比べてシュバルツは母親と共に家財道具を持てるだけ背負い袋に入れてゆっくり歩いている。
「社の奥に広場があるからそこへ一応向かうが飲み水がないな。あぁ、川の水でいいか」
父親は向こうに行けばなんとかなるだろうと楽観的だった。
エルデは背負えんといい最初から手ぶらだ。
父親と共にどんどん進んでいく。まだまだ若いもんには負けないよと言っているようだった。
なんかピクニック気分だなぁ…。
アルは抱っこ紐で母親に括り付けられているのでこえを聞くことしかできないが楽しそうでなによりだと思っていた。彼もまた父親にである。
少し歩いて東の山の麓にある社にまで着いたので一休み。
父親に何故か肩車されているアルと隣を歩くジャック、オルガは先に少し小高い丘から村の方を見てみていた。
地鳴り??
村のさらに奥が
避難した村人もそっとその
ドドドドドドドッ
その時、大きい影が村の柵を壊して現れた。
「…おいおい!ジャイアントかよ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます