第6話 赤い球体

寒さが俄然続く中、食っちゃ寝を繰り返してる主人公。


最近ふと気になったんだけど

赤ちゃんの時って記憶ないよね。

俺は今赤ちゃんなんだけどバッチリあるのよ。


こういうのって大きくなったら薄れて消えていく…とかないよね?

このアルって赤ちゃんは俺ってことでいいんだよね??


会話ができないから自問自答している時間が増えてきた。

人間観察もあんま寝床から見えないから声だけで判断するしかない。

どうやら今は冬、家の中で赤ちゃんやってます!


家族構成は

若い女性→母親

若い男性→父親

婆さん→母親の母→祖母

シュバルツ→長男

ジャック→次男

俺→アル→三男

の6人家族で一緒の家?小屋?に住んでいる。

家族の集まるダイニングと皆で眠る寝室の二つだけの家。

外には倉庫のようなのもあったから荷物は外にあるんだろうけど何もない殺風景な部屋に俺がポツンと寝てるのが現状だ。

あえて言おう!!

暇だ!


もう考察も終わったよ!

話してる内容もご飯無いとか腹が減ったとジャックが叫んでるくらい。


毎日が平和に過ぎていく。

魔法とかこう!!イベントがあってもいいんじゃないか?

(危険じゃ無いやつで!)


そう考えていると頭の中で音が響く


イィィイィィィィン


耳鳴りは前世で感じたことのある音と一緒だった。

音はしばらく続いたがやがておさまった。

体が揺れた気がしたがあれは地震?


ドックンドックン


心臓の音が聞こえる

今まで何も聞こえなかった?気にしてなかった音がハッキリ聞こえる。


心拍にあわせて体が動く。

ドックンドックン。


なんだ?何が…


「おぎゃぁー!おぎゃぁぁ!!」


今までより大きな声で叫んでいた。

この違和感はあの時と同じ??


必死に叫んでいると父親が真剣な顔で抱き上げてくれた。


「アル、どうした?!アッつ!!」


そうなんですよ、

赤ちゃんが赤くなって泣いてるから赤ちゃん…

今はいいか。


全身が熱く燃えているようだった。

でもどこか冷静で頭が回る。


「アル!アル!!」


母親も来てくれた泣きじゃくったことで周りにも心配してくれた人が集まっている。


そこへ唐突の爆発音っ!


どぉぉぉぉん!!!


音だけ響く家の中で爆発の突風だけが駆け抜けていく。

静かな冬に似合わない大きな音は家屋横の畑に大きな窪みを作り中は赤く光っていた。


村人が集まる。

直径20cmほどの赤く光る物が窪みの中心にあり太陽に照らされてキレイな宝石にも見えた。


興味津々の隣の家のオルダが赤く光っているところに木の棒で突くと火が灯る。


「おぉ」


周りから驚きの声が上がる。

村長がやってきてそのままにしておくようにと皆を説得して回った。熱くて持てないから何もできないことは皆が腑に落ちたので土だらけの家屋の掃除に取り掛かる。


家に土が被ることがなかったためホウキで屋根をキレイにしていく。

アルが泣き止んだことで母親も清掃作業に加わったがお昼の時間が近いこともあり、被害のないお隣さんへ(オルダ家族)向かった。


「お昼一緒なんて久しぶりだねぇ」


「あはは……申し訳ない」


父親は食材を提供してオルダと席につく。


「急に降ってきたもんな、もう少し奥だったら家が吹き飛んでたな」


「あぁ」


「むしろ怪我が無くてよかったじゃないか」


「まったくだよ、アンタも怪我がなくてよかった」


「っわりぃ」


衝撃と共に現れた赤く光る物に興味本位で近づいて下手したら火傷じゃ済まなかったかもしれないと家族で咎められていたところに食事のお願いで助け舟だった。


「なんかお前んとこのアルが泣きじゃくってたよな」


「大きい声だったよね」


「隣の畑の方にも届いてたよ」


「急いで戻ったらコレだもんな」


今は皆で持ち寄った机を外に広げて食べているオルダが落下物を指で指す。


「どっかから魔法でも撃たれたか?」


「いやいやこんな村に何の用があるってんだ」


「南西に向かえば都があるじゃないか」


「あれは都じゃなくて街だよ、ノース街」


「良いところよね、いとこが住んでるんだけど活気があって地祭も賑やかだったわよ」


都会気取りで話に花を咲かせているのはオルダの奥さんでラランだがいとこと自分を比較して私もいつか街に行きたいわとオルダに目配せしている。


「時期が来たら行きたいけどこの村は平和だから良いんだよな」


「春先にでも行ってくればいいんじゃないか?行商の馬車もあることだし?」


「雪解けしてしばらくしたら種蒔きだからな」


「今のうちに準備だけしとくか」


やったーと両手を上げるララン。

お土産話でお昼は終わりを迎えた。


昼の授乳が終わり昼寝の時間で部屋の奥を見つめていたアルは赤い球体が浮遊しているのが見えた。


アルの視線に入ろうとあっちへ行ったりこっちへ行ったり、八の字を描いている。


なんだぁ?


小さな手で触れようと手を伸ばすが届かず地面に手を下ろす。

すると飛び回っていた赤い球体はゆっくり手の上に…

消えたっ!?


手で触れるかどうかのタイミングで母親が声をかけてきた。


「そろそろおしっこかしら〜」


いや全然!まだまだですよー

ポタポター…。


できた母親ですね。

素直に拍手です。


さっきの赤い球体も消えたしなんか眠くなってきたからお昼寝でもしようか…zzZZ


目を閉じたアルの隣に赤い球体が降り立ちアルの中に入っていく。

その日の夢はしばらく思い出せるほど鮮明で前世の自分が火の魔法を必死で練習している姿だった。

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