第4話 食料事情は前代未聞
朝はいろいろ出てて俺がグズってしまったが早々に片付けてもらって今は授乳中だ。
自分より若い子が胸を出してそんな!そんな!!
いけませんよ!!
なんて思ったけど生きるためです。
(———生き甲斐じゃなくて!)
「上の子2人の時より全然泣かないから母さんは心配ですよ」
「大人しくて良い子じゃないか」
「元気に泣くのが赤ちゃんだと思うのだけれどこの子は私たちが近くにいる時にしか用を足さないのよね」
「今朝畑に出かけた息子なんかこのぐらいの時はギャースカうるさかったけどねぇ」
「親のことをこの子なりに考えているのかも?」
「そりゃすごいね、うちらの子ではないようだよ」
あっはっはーとお気楽に笑いながら食事の支度に戻る婆さん。ところで気づいてますか?
もう手足動かせるんです。ただ動かせるだけで立つことも座ることもないんですがね。
時々父親が来て俺の足ウラくすぐって反応見て笑ってるけどお前暇なのか?抱っこでもして外連れて行け〜!
やっぱ寒いんでいいや。
季節あるよね?まさか寒いまま??
そうそう、前世では妹がいたんですが今世では兄が2人いるんです。しっかり者のシュバルツ兄さんとイタズラっ子のジャック兄さん。
もうね、性格が真逆で2人はケンカが絶えないようです。
飲む水の量で争ったり家の窓にどれだけしがみつけるか勝負してるのがよく聞こえてた。もちろんふっかけるのはジャック兄さんなんだけど危なくない遊び感覚ならシュバルツ兄さんも乗り気で拍車がかかって近所のおじさんにこっ酷く叱られてたね。
時は流れてお昼前にそんな2人が今俺の面倒見てくれてる…けどなんで外連れ出した??
寒いさっむいんですけど。
「家の中だとつまらないだろ?外今すっごい雪積もってるからさ」
「でも母さんに任せられたのに外出て良かったのか?」
「アルだって家の中じゃ退屈だもんな」
ニカッ!
あらカワイイ、じゃない寒い寒い!
「おんぎゃぁぁ」
「わっバカ!」
慌てて俺の口に手を当てて塞ぐジャック
だが一足遅く昼ご飯で家に戻ってきていた父親に見つかってしまう。
「おいおい、なんでアルを外に出してるんだ?」
「父さん?!」
「ん?何かあったのか?」
「いや、アルに外を見せようと思ったんだよ」
「泣かれたけど」
「まだ早いんじゃないか?外はまだ冷えるから春になったらな」
持っていた布を俺に被せて代わりに抱っこしてもらった。軽々持つよね。
前世の俺もそれなりに鍛えてはいたからそんな自分が今簡単に持ち上げられると若干の戸惑いが…。
いやいやまた鍛え直せるじゃないか。
動けるようになってからの鍛錬メニューをいろいろ考えていると家の寝床に置かれた。
「あれ?母さんたちはどうした?」
「広場で交換してくるって言ってた」
「ボクらにアルを見ててほしいって」
「そうか、ご飯まだなんだろ?」
「まだだけど婆ちゃんもいないから」
「2人で行ったのか?」
「婆ちゃんはトンガリ山に行くって言ってたらしいよ」
「あぁ神様に報告か」
「神様〜」
「腹いっぱい食べ物ください」
「それは畑に言えってむしろ手伝えばもっと食えるだろうに」
「冬は食べ物できないじゃん」
ぁヤバい
父親のぷっつんが聞こえた気がした。
「春に備えて畑準備だってあるだろうがぃ」
ゴッ
あぁ良い音だ。躊躇なくジャック兄さんに振り下ろされた剛拳は
「ぁぁぁあいってぇ!」
頭を抑えて飛び上がった姿を見て少し笑ってしまった。
「きゃきゃ」
「ん、今アルが笑ったぞ」
「ホントだ初めて見たね」
「おいジャック!もう一度だ」
「イヤだぁぁぁ」
「ぷっあはは」
シュバルツ兄さんは品良く笑う
逃げ惑うジャック兄さんは父親に笑顔で追いかけていた。
「ジャック、外にまで響いてますよ」
小さめなカゴをテーブルに置いて母親が言う。
「さぁ調味料分けてもらえたからご飯にしましょう」
「おかえり!母ちゃん助けてよぉ」
ジャック兄さんが言い母親の後ろに隠れる。
父親は追わず笑っている。
昼ご飯の前に争いは皆無だ。
これからご飯という時に婆さんがタイミングよく帰ってくる。そのまま真っ直ぐこちらに向かって…。
「隣の村で今年も餓死者が出てしまったそうだよ」
気落ちして椅子に座るが俺を見ている。
子供らにたくさん食べさせたいがなぁと塞ぎ込んでいる。
そんな家の昼ごはんはスープだけだ。
少し野菜が入った塩汁でご飯やパンは無い。
水は雪解け水で一度沸かしてから使っているようだ。
ここの生活も豊かでは無いらしい。
転生ってもっと心躍る大冒険的な話かと思ったら意外とハードモードだ。
明日食う飯もままならないようで数少ない食料を村のみんなで分けているようだった。
あれ?俺って育たず死んじゃう可能性があるんですけど
:(;゙゚'ω゚'):
食料はこの俺が〜とか転生の最強スキルでーとか無い?
母親のミルクが今の自分に一番必要なんです!
誰か助けてー!
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