7

尾手メシ

第1話

 病院の受付けを終えると、受付番号を渡された。安っぽい紙に記されたのは「77」。

 エレベーターへ向かうと、タイミングよく扉を開けている。中には他の患者が数人乗り込んでいて、ざっと数えてみれば六人。七人目として乗り込んで、七階のボタンを押した。

 扉が閉まって、エレベーターが動き出す。しかし、すぐに停まってしまった。二階で扉が開くと、一人が降りていく。再び動き出したエレベーターは三階で停まり、また一人が降りていく。四階、五階、六階と各階に停まるたびに一人ずつ降りていき、やがて、エレベーターは七階の表示で停まった。

 開いた扉の正面の壁には、大きく「7F」と掲げられている。その「7」を見ながら、七番目にエレベーターを降りた。

 七番目?七番目だろうか?

 違う、六番目だ!

 慌てて振り返った先、エレベーターの扉は閉まっていく。どんどん狭くなるその隙間から、エレベーターに残った七番目と目が合った。七番目の厭らしい笑みだけを残して、無情にも扉は閉まりきり、七番目を八階へと運んでいく。

 力が抜けてよろめいた拍子に、背後の壁に背中が当たった。衝撃で「7」の文字が床に落ち、捻れてのたうち、非常に奇怪な、奇怪としか言いようのない「7」へと変貌した。

 絡みつこうとする「7」を払い除けて、逃げようと右の通路へ足を踏み出しかけたが、止まってしまった。床に扉があり、天井に窓がある。狂っている。捻れている。壁が一つ脈を打つ。

 番号を呼ぶ声がする。受付番号を確認すると、「77」は互いに喰い合いながら複雑に絡まり合い、一つの形を成していた。その番号が呼ばれている。床の扉が開けられて、白衣を着た「7」が手招いた。

 「8」だ。「8」へ転じなければ。縋るように壁のボタンに取り付いて、必死にエレベーターを呼ぶが、一向にやってくる気配はない。七番目を乗せて「8」へ行ったっきりだ。偽りの七に八はない。

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