お見合い話で都合が良い!

維 黎

都合が良い話

 憂鬱。とにかく憂鬱。

 あたしは今、ちょっとした用事があったので実家に来ていた。Y県Y市。

 用事が済んで帰ろうとした矢先、両親――特に母さんから強く呼び止められた。


『――アンタ、そろそろいい歳なんだから良い相手ひといないんだったらお見合いしなさい』


 そう言って母さんがお見合い相手の写真台紙を出してくる。

 げっ! 

 ちょっとこめかみがピクピクしてしまった。

 な予感はしてたんだ。もちろん、あたしの年齢的に結婚しててもおかしくないし、見合い話も(必要ないけど)上がって来て当然といえば当然なんだけど。

 そういうこととは違って何かしらの嫌なことや面倒ごとが起こるんだろうとは思ってた。


 27歳――と、いうより”7”がつく歳は何かあるんだろうなぁ、と。

 7歳の時に学校の階段で躓いて額を4針縫う怪我をした。今でも薄っすらと痕がある。

 17歳。当時付き合ってた彼氏に二股かけられてた。ぶっ飛ばしてこっちから分かれてやった。

 で、27歳はお見合い話……いらねぇぇぇぇ!


 憂鬱。とにかく憂鬱。

 大事なことなので二回ね。


『あたし、まだ結婚なんて考えてないから。お見合いなんて必要ない』

『そう言うと思ったけど、ダメよ。お父さんの知り合いの知り合いの方の御子息で、お仕事上の関係でもあるから。お見合いだけは受けて頂戴。結婚云々は断るにしてもね』


 母さんったら気楽に言ってくれちゃって。その断るっていうのが一番気が重いんじゃない。

 あぁ、もうッ!!

 今からどうやって断ろうかと考えながら、とりあえず手渡されたお見合い相手の写真を見ることにする。


「……ちょっとアンタ。一体何やってんのよ」


 予想外に見知った相手を見つめてあたしはぼそりと呟いた。

 まぁ、でも。おかげでずいぶんと気が楽になった。というか、ちょっと認めるのは癪だけど、このお見合いを楽しみにし始めている自分に気付く。


 ほんと、都合ってば都合が良い。




――続――











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