同棲生活スタート

 エレベーターで最上階へ。

 到着早々、窓辺からは街並みが見渡せた。すげぇ……常時、展望台とかテンションがあるなぁ。しかし、それよりも新居だ。


 つまり、俺と咲良の愛の巣となるわけだ。


 咲良が最後のセキュリティを解除する。ここまで四つはセキュリティを突破してきたが、ようやく最後。


「じゃあ、開けるね」

「頼む」


 最先端のスマートロックらしい。スマホの専用アプリで解除できるとはなー。感心していると、ついに最後の扉が開いた。


 広く長い廊下が出迎えてくれた。


 さすがに綺麗に整っているなぁ。ピカピカだ。上がるのがもったいないくらいだ。けど、構うものか!


 靴を脱ぎ、そのままリビングらしき部屋へ。



「「おお~!」」



 俺も咲良も驚きの声を上げた。

 広い空間がそこにはあったからだ。テニスコートくらいあるんじゃないか? すげぇ広いな。キッチンもセットになっているのか。


 東京スカイツリーに住む気分だな。

 こんな良い部屋に住めるとか夢のようだ。


「すげぇな咲良」

「う、うん。わたしもここまでとは思わなかったよ」


 どうやら、咲良ですら想定外だったようだな。



「そうだろう、そうだろう!! 二人とも気に入っているようだな、ワハハハ!」



 いきなりヌルッと現れる親父。って……!



「うわああああああ! なんでいるんだよ!!」

「父さんも見たいと言っただろう」

「そうじゃねぇ~! どうやって入ってきた!?」

「馬鹿もん。ここの管理は、父さんが任せれているのだよ。侵入――いや、管理人として入ることなど容易いのだよ」



 今、侵入とか言いかけなかったか!?

 本当は入れたのかよ。てか、親父が管理人だぁ!? 最悪じゃないか……。変なことされないかと心配しかない。



「頼むから、大人しくしてくれ」

「父さんを信用しなさい」

「できねーよ」



 呆れていると、更に声がした。



「まあまあ、純。父さんがここまでしてくれたんだから」


 俺をなだめる声がした。

 って、まさか!!


「姉ちゃんもいたのかよ!!」

「まあね。父さんに連れて来られちゃって、純より先にいたのよ」


 くっ、親父の計画だったか。やられたよ。

 こんなサプライズがあるとはな。



「悪いが、姉ちゃん」

「分かってる。純は、咲良ちゃんと二人でがんばりなよ。さあ、お父さん。そろそろ行くわよ」


「ぬぅ!?」



 姉ちゃんが親父の首根っこを掴み、引きずっていく。どうやら、帰るみたいだな。これでやっと二人気になれそうだ。姉ちゃんに感謝だな。


 見守っていると、姉ちゃんと親父の姿が消えた。本当に帰ったようだ。



「まさか、純くんのお父さんとお姉さんがいたなんて、驚いちゃった」

「ごめんな、咲良」

「いいよ~。ちょっと緊張も解れたし」

「あ、ああ……」



 気づけば、咲良が俺の腕に絡みついていた。そんな恋人みたいに……! 緊張が解れるどころか、増したぞ。


 けど、俺はずっとこうしたかった。


 咲良と二人きりでこの街の風景を眺める。なんて贅沢で幸福なんだ。



「ねえ、純くん」

「ん、どうした」

「……好き」


 ボソッとつぶやく咲良。突然のことに俺は頭が真っ白になった。でも、それが咲良の気持でもあった。感激だ。嬉しい。


 涙を堪えていると、スマホが振動した。誰だ……?

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