許嫁をかけた戦い

 早くも放課後になった。

 そろそろヤツが挑んでくるはずだ。


 教室で待っていると扉が開いた。そこには三年の木下がいた。俺の方へ向かってくると、机を叩いた。


「待たせたな、有馬」

「木下先輩。本当に良いんだな」

「いいとも。有馬、俺が勝ったら関さんはいただく」


「じゃあ、俺が勝ったら先輩は、関さんと二度と関わらないでくれ」


 それが条件だ。

 木下は、不敵に笑いながらも了承した。

 これで決まりだ。

 俺は絶対に勝つ。


「決まりだ。さっそく勝負だが、このゲームで勝負だ」


 や、やっぱりゲームか!

 しかもこれは……まさか、今流行りの……!


 木下が示してきたのは大人気FPS『カウンターアタックオンライン』だった。スマホで簡単に、誰でも遊べるアクションゲームだ。


「なるほど、CAOで勝負ってことか」

「ほう、有馬。このゲームを知っているのか」

「クラスの連中がやってるからね。俺も流行りに乗ってこっそりプレイしているのさ」


「なら話は早い。ルールは簡単、新規アカウントで一対一の勝負だ。デスゲームルールで、銃は何をつかっても良し」


 デスゲームルールか。

 つまり、相手を多くキルした方が勝ちだ。俺は爆破ボムゲームの方が好きだけどな~。あっちの方が攻守あって緊張感あって面白いし。


 なんと考えていると関さんが肩を叩いて来た。


「ね、ねえ、カウンターアタックオンラインって?」

「ああ、そうか。関さんは知らないか。スマホのゲームさ。ほらこれ」


 アプリを起動してゲーム画面を見せてあげる。すると関さんは理解してくれた。


「ゲームなんだね。スマホで出来るんだ。映像綺麗だね」

「これでリアルマネーを稼いでいる連中もいるからな」

「え、稼げるんだ?」

「ランカーになったりすると何百万と稼げるんだよ。――って、そりゃいいや。関さんは見ていてくれ」

「うん」


 運がいい。俺はこのカウンターアタックオンラインをやり込んでいる。ついでに言えば、ランカーでもあった。これは勝てるぞ。


 さっそく席に着き、新規アカウントを作成。専用ルームを作成して木下の入室を待った。


 しばらくすと『Avalancheアヴァランチ』という名前のキャラクターが入ってきた。


「その名前が俺のキャラ名だ」


 そうか、先輩のキャラか。



「俺は『Crevasseクレバス』だ」

「なんと……“雪崩”に“氷河の深い裂け目”ときたか。なんだか因縁を感じるぞ」

「知るか! さっさとやるぞ」


 俺は、ルール設定を済ませた。

 時間制限:五分間、50Kill勝利、メインウェポン、サブウェポン、接近武器、投擲とうてき武器あり。課金特殊アイテムなし。リスポーン時の装備変更あり。


 こんなところか。

 それを木下にも見せた。


「それでいい。先に50キルした方が勝ちだな」

「言っておくが、手加減はしないぞ先輩さん」

「ふん、今に見せてやろう」


 ゲームスタートのボタンを押した。

 ロードが始まり、いよいよ試合開始だ。

 そんな緊張感の中、関さんが隣の席から話しかけてきた。


「がんばってね、有馬くん。許嫁解消なんて嫌だからね」

「負けないよ。俺を信じてくれ」



 ついにマップ画面に切り替わった。

 場所は定番の『工場』だ。


 建物が多くあるから、隠れる場所も多い。


 俺の装備はアサルトライフル『SCARスカー』、ハンドガン『Five-Seven』。それにグレネードとコンバットナイフ。


 敵の……木下はどんな武器を使って来るか分からない。


 それにリスポーン時に装備変更も出来るから、戦法を変えてくる可能性も。なんにせよ、俺は勝つ!

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