ゲーム勝負の予感

 公園を抜け、俺は学校を目指した。

 随分と話し込んでしまったからな、急がないと。


 学校に到着し、教室へ向かう。

 すると教室の前に関さんがいた。こんなところに珍しいな。……む? 誰かと話しているようだな。


 俺は構わず話しかけた。


「関さん、おはよう」

「おはよう、有馬くん。ごめんね、今この人に話しかけられていて」


 関さんの目の前には、少し大人びた男子がいた。三年の先輩かな――なんて思っていると、彼は名乗った。


「俺は三年の木下だ。彼女、関さんに交際を申し込みにきた」

「……なっ!」


 こ、コイツいきなり何を言いやがる。

 キザったらしい口調で何なんだ。


 困惑する関さんは、俺に助けを求めていた。そうか、どうしたらいいのか分からなくて立ち尽くしていたんだな。


 すると関さんが耳打ちしてきた。


「ごめんね、有馬くん。この人とは何もないからね」

「それは良かったよ。困ってるっぽいし、追い払おうか」

「いいの? 迷惑じゃない?」

「迷惑なものか。関さんを守ると誓った」


 だからこそ、俺は腕を捲って奮起する。

 今こそ俺は許嫁としていいところを見せる時だ。俺は木下の前に立ち、ヤツを睨んだ。


「君が噂の許嫁か」

「なんだ知っていたのか」

「まあまあ有名だからね。確か、有馬とか言ったな」

「そうか、覚えなくていいぞ。あと帰れ」


「そうはいかない。許嫁であろうとなかろうと関係ない。俺は必ず、関さんを彼女にしてみせる」


「なんだと……」


「有馬、お前に勝負を挑む! 俺が勝ったら関さんをもらうぞ」

「しょ、勝負だと!?」



 追及する前にも木下は背を向け、去っていく。あの野郎……!

 なにが勝負だ。



「ありがとう、有馬くん。助かった……。わたし、あの先輩さんちょっと苦手で……。でも、勝負って」

「さあ、分からん。でも、なんであれ俺は勝つよ」


 どんな勝負か分からないが、関さんを守る為なら俺はなんだってする。


 そんなこんなで授業が始まった。



 * * *



 授業を真面目に受けていると、前の席の天海さんが小さな声で話しかけてきた。


「ねえ、有馬くん」

「なんだい、天海さん」

「三年の木下って先輩が、関さんに告白したってホント?」

「――な、なんで知ってるの!?」


「いやぁ、廊下で姿が見えたからさ。もし、関さん取られちゃったら、あたしが結婚してあげるからさ」


 気持ちは嬉しいが、俺は関さんをあんなキザ男に取られたくない。それに、天海さんが許嫁だなんてまだ信じちゃいない。

 何人も許嫁がいてたまるかっ。


「間違いではないけど、俺は認めてないよ。木下先輩とは早い内に決着をつける」

「そっかー。気を付けた方がいいよ~。木下先輩って凄腕のゲーマーらしいよ。多分、ゲームとかで勝負するんじゃないかなー」


 マジか。だとすれば、俺も有利だ。

 あらゆるゲームをプレイして極めているからな。バトロワだろうが格ゲーだろがなんだってござれだ。


 よし、この勝負、勝ったも同然だ。


「情報をありがとう、天海さん」

「いやいや~」



 そうして授業が進み――昼休み。



 隣の席の関さんがこっちに来た。

 少し膨れた様子で……って、アレ。いつもニコニコしてるのに、今日はなんだか不満気だ。


「ど、どうしたのかな」

「天海さんと何を話していたの……」

「い、いや~、木下先輩のことで……」

「本当に? 浮気じゃない?」


 あ~、なんだ心配してくれたんだ。関さん可愛すぎかっ。


「そんなことないよ。例の勝負内容が分かった。恐らくゲーム系だ」

「そうなの? てか、天海さんって木下先輩のことなんで知ってるんだろ」


 それは確かに不思議だ。

 だが、おかげで心の準備はできそうだ。


 ヤツはいったい、どんなゲームで挑んでくるのやら……。

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