チート野郎に鉄槌を! 勝利の弾丸

 物陰に隠れつつ、俺は木下に攻撃を与えていく。

 やはり実力は俺の方が上。この手応えは間違いない。


「…………くっ! 馬鹿な、もう10キルもされちまった」


 手も足も出ない状況に焦りまくる木下。当然だ。俺はこのゲームを極めていると言ってもいい。


 確実に木下を倒していく。俺も何度かやられるが数字的にはこちらが勝っている。



「な、なんだか凄い指さばきだね、有馬くん」



 隣で関さんが俺の画面に見入っていた。そんな風に褒められると照れるな。この調子で木下を確実に倒していく。


 現在、俺が32キルポイント。木下が19キルポイントと差が歴然だ。このままいけば勝てる。


 工場マップを熟知している俺は、裏道を使い、もはや木下をリスポーンキルさえしていた。



「クソ、クソ、クソォォォ!!! なぜだ。なぜ有馬がこんな強いんだ!!」

「先輩さん、こんなプレイヤースキルで俺に挑むとか百年早いぞ」

「ば、馬鹿にしやがって!」



 どうやら、木下はマシンガンに切り替えたようだ。しかも、超高火力の課金武器じゃないか!



「卑怯だぞ、先輩!」

「黙れ。お前に勝つ為なら、チートくらい使うさ。ついでに加速チートも使ってやる」



 コ、コイツ……チートを使用したのかよ。なんて野郎だ!!



「ねえ、有馬くん。チートってなに?」

「卑怯な裏技みたいなものさ。不正行為だから、公式から禁止されている」

「えっ、それ反則じゃん!」



 だが、木下は試合続行だと不敵に笑う。こいつ、ブン殴りたいっ。だが、このまま引き下がる俺でもない。俺はこういうクソチートと何度も渡り合ってきた。

 度々現れるチーターを何度も倒してきた。今回だってやれるさ。


「フハハハ! これでお前は終わりだ、有馬ァ!!」


 キャラクターの移動速度を超倍速にして、壁さえも突き抜けてくる木下。コイツ、壁すり抜けもしやがるのか。


 当然、俺はしばらく反撃に遭い、キル数を譲ってしまう。


 このままでは追い抜かれる。

 だが、それでも俺は諦めない。


 武器をスナイパーライフルに切り替え、俺は忍者のように行動を開始。物陰に隠れ、木下の動きを探った。すると、ヤツのキャラが爆走してきた。



「……そこか!」



 自分で言うのもなんだが、神業的エイムで木下の頭を撃ち抜いた。



「ばっ、馬鹿なあああああああ!!」

「驚くのはまだ早いぜ」



 突撃してくる木下を俺は次々に撃破。

 俺はスナイパーならNo.1だと自負している。対して、木下は加速してマシンガンをぶっ放すだけ。戦略もクソもない。


 そうして、俺はついに47キルポイントまで到達。あと少し!



「なぜ……なぜだ。俺はチートを使っているんだぞ!!」

「堂々と言うな、卑怯者。これで48、49……」

「やめろ……やめてくれ……頼む!」


「ラスト!!」



「うあ……うわ、うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああ…………!!!」



 スナイパーライフルを撃ち、木下のキャラの眉間みけんに弾丸を食わらせた。



 WIN:Crevasseクレバス



「俺の勝ちだ」

「…………そ、そんな。こっちはチートを使っていたのに……そんな、そんな、そんなあああああぁぁぁ……」


 情けない声を上げ、木下はそのまま脱力して真っ白になった。勝負あったな。



「先輩さん、もう関さんには関わらないでくれ」


 スマホをポケットへ戻し、俺は関さんの手を引っ張った。



 * * *



 学校を出ると、関さんが足を止めた。


「有馬くん、勝ったんだよね?」

「ああ、俺の勝ちだ」

「良かった……良かったよぅ」


 泣きながら抱きついてくる関さんを、俺は受け止めた。ずっと心配してくれていたんだ。


「チート使われてちょっとピンチだったけど、普段からチーターを撃破して遊んでいて良かったよ」

「あれって卑怯な技なんでしょ? よく勝てたね」


「無敵チートなんて使われたら倒せないけど、通常はそこまで出来ないからね」

「そうなんだ。でも、良かった。これで許嫁のままなんだね」



 涙ぐんで関さんは、俺の胸に顔を埋めた。

 いかんな、俺の想像する以上に心配を掛けてしまったようだ。普段はランカーで自信があったとはいえ……思えばリスクの高いことをしていたと思う。そこは反省しなくちゃな。


「もちろんだよ。だから、帰ろう」

「うん。一緒に」



 俺は自然に関さんの頭をでた。

 すると関さんは嬉しそうに受け入れてくれた。


 ……勝てて良かったぁ……!

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