学校サボって『GOGOカレー』へ!

「天海さん、悪い。俺は行くよ」

「そっか~。じゃ、また話そうね。席も近いし」


 手を振って別れ、俺は屋上を去った。

 なんだかいい気分だ。


 昼休みはまだある。関さんを探しにいくか。


 恐らく校長室にいるはず。

 様子を見に行くつもりで俺は向かった。


 階段を降り、校長室のある二階へ。すると丁度、関さんの姿があった。こちらに気づき駆け寄ってきた。


「有馬くん、グッドタイミング!」

「やあ、関さん。校長となに話していたの?」

「今朝の事件のこととか。大丈夫、これからは安心して学生生活を送れるから」


 そんな風に元気よく言って俺の手を引っ張る関さん。不安なんて簡単に吹き飛ぶような笑顔だ。


 これを見る限り、問題はなさそうだな。


「それなら良かった。けど、なんだか教室へ戻り辛いな」

「そうだね。あんな事件が起きちゃって変な目で見られそう。――あ、そうだ。今から学校サボろっか」


 意外すぎる提案に俺は驚きつつも、名案だと思った。関さんと二人きりで過ごせるチャンスでもあるからな。


「でも、本当に良いの?」

「特別な青春を送れるのは今だけだからね~」

「それもそうだ。よし、こっそり学校を出よう」

「さすが有馬くん。話が分かる~!」


 本来なら俺が引っ張っていくべきなのだが、関さんが俺の手を引っ張る。このエネルギッシュなところには勝てないなぁ。


 廊下を駆け抜けて昇降口へ、靴を履き替えて――そのまま校門を出た。


 学校をこの昼の時間帯に抜け出すなんて、初めてだ。しかも、関さんも一緒。最高かよっ。



「で、どこへ行く?」

「う~ん。まずはお昼ごはんかな」

「じゃあ、近くにあるGOGOカレーにするか」

「いいね! GOGOカレー美味しいよねぇ」



 どうやら、関さんもGOGOカレーの経験があるらしい。

 駅前に行くとゴリラの看板を背負うお店がある。そここそがGOGOカレーだ。カツカレーが激ウマなんだよな~。


 徒歩十五分ほど歩くと黄色い看板が見えてきた。それとトレードマーク(?)のゴリラ。いったいアレは何なんだろうな。


 気にせず中へ。


 食券販売機でメニューを選ぶ。



「やっぱり定番のチキンカツカレーかな」

「うん、わたしも同じのにする」



 決まりだ。

 お値段は八百円と一食としては少々高額だが、払えない額ではない。それに、せっかくの特別デートなのだ。ここは関さんに喜んでもらう為にも――。



「じゃあ、おごるよ」

「えっ、でも……」

「大丈夫。これでも俺は稼ぎがあるんだ」

「そうなんだ。有馬くんってバイトしてるの?」


「それは後で話す。それより、先に食券を買うぞ」

「うん、分かった」



 チキンカツカレーの食券を購入。受付にいるスタッフに渡し、それから空いている席へ座った。



「ふぅ。ここは落ち着く」

「なんだか慣れてるね」

「俺はたまに来るんだ。ここのカレーは極上だからな」

「そっか~、常連さんなんだね」

「そんなとこ」


 俺はカレー大好き人間なので、GOGOカレーの他にもたくさんの店舗を回っているのだ。稼いでいる金のほとんどをカレーに注ぎ込んでいると言っても過言ではない。


 しばらくすると出来立てのチキンカツカレーがテーブルに運ばれてきた。女性スタッフが丁寧に並べてくれるが――ん?



「お待たせしましたー…って、純!?」



 店の奥から現れたのは、まさかの姉ちゃんだった。嘘でしょ!?



「姉ちゃん! こんなところで働いていたのかよ! 知らなかったぞ」

「こっちだって驚いているわ。ていうか、咲良ちゃんもいるじゃん。学校サボってデート?」


 関さんは困惑しつつも、姉ちゃんに事情を説明した。


「あの、有馬くんのお姉さん。実は――」

「え!? 朝、事件に巻き込まれた!? それで今は気分転換に学校サボってる!? なに!? なにがあったの!?」


 大混乱の姉ちゃん。

 おいおい、驚きすぎだって。


「姉ちゃん。あとで詳しく話すから落ち着けって。他のお客さんが見てるぞ」

「…………う。そ、そうだね。店長にも睨まれてるし、あとで聞かせてよね!」

「ああ。家で話すから」

「絶対だからね! ごゆっくり!!」


 俺を睨む姉ちゃんは仕事へ戻っていった。……あぁ、びっくりした。こんなところにスタッフとして働いているなんて思わなかったぞ。



「お姉さん、働いていたんだ」

「普段は大学生のはずなんだがなー。まあ、お金が欲しいのかも」

「そうなんだ」

「それは置いておいてチキンカツカレーにしよう」

「うん、早く食べないと冷めちゃうもんね。美味しそう~」


 スプーンを手に取り、目の前のチキンカツカレーをまずは目で楽しむ。山のようなカツがまるごとカレーの上に乗せられている。相変わらずボリューム感すげぇな。


 濃いソースがまんべんなく掛けられており、食欲をそそられる。


 俺はさっそくカツをひとくち――。


『サクッ……!』


 サクサクの肉汁たっぷりで美味ぇ!!



 これこれ、このチキンカツよ。更にカレーも同時に味わっていく。



「……んまっ!」



 幸せ~~~~~~!!!

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