第19話 決意

「ちょっと待って……昨日から色々起こりすぎてる」


 徒然とぜんは「そういえばファンタジー系もあったな」と頭をかきながら部屋を見渡した。ダレルが言った。


「場所がわかってよかったですね。助けるだけだから」

「強いから出る発想」


 闇の城へ。


「いやいや怖い怖い、日に当たったことなんて数回しかないのに、きっと灰になって死んでしまう」

「でも、きっとあなたの発明が助けになります」

「発明してないです」

「へ?」

「発明家じゃないです」

「さ、行きましょうか」

「やばいこいつ」


 ダレルが少しはにかみながら話をした。


「いや、少し心配なんだけど、あいつ同じバスに乗る時にステキな人と出会ったんだって言ってたんです。その人を守りたいんだって。確か白銀劉しろがねりゅうから三泉町みずみちょう化物けもの陸道でくるルートで」

「え?」

「確か名前が」

「ええ」

「チエさん? って言ったかな」

「行きましょう」


 徒然はしばらくあたりを目渡して

「フライパンを持っていくよ。武器になるのはこれくらいだから」


 徒然はダレルに導かれるまま、ダレルが持ってきたデリバリー用のトラックに乗り込みながら、「というか、帰らなくていいんですか?」と聞いた。


「大丈夫です。有給使ったので」

「は、はぁ」


 トラックのエンジンが大きな音を立てて静寂を蹴散らしていく。八十草の墓地の紫色の土をえぐりながら、罰当たりな二人組がトラックを走らせる。

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