第17話 途方に暮れる

「金目の物はいただいた、ずらかることにするが、お前たちのやったことは許せねーことだぜ」


 影狼かげろう衆の頭目であるさかきが何やらいやらしい笑みを浮かべながらぶつぶつと何やら呟いていた。


「撃ったのは私です」

「……ふーん」


 シリルの訴えに銃を担ぎながら無関心そうな返事をする。


「人質はここにいるので全員だな」

「へい、運転手、スタッフ、乗客、乗っていたのはここにいるのは全員です」

「よし」


 突如としてバスが大爆発を起こした。秋風ちえたちが驚いて後ろを向くと、炎の中からあの巨大な狼の生物兵器が現れた。


「!?」

「殺したと思ったか? ロボは死なないのさ。殺しはしないが、まあなんとか上手くやりな」


 唖然とする秋風たちをおいて影狼衆はロボとともに走り去っていった。


「無線機は! 無事ですか」

「あります」

「救難は相手を選ばずに発信してしまいます、秋風さんが先程かけていた所へ」

「わかりました。ええと、ここです」

「ありがとうございます」


 無線機がなかなか繋がらないので、シリルは少し気が立っている風だった。


「もしもし! もしもし! こちら化物けもの陸道下りの67番付近! だれか! バスが破壊されました。」

『え……? はい、正確な場所はわからないんですね? あっ、ちょっと、……はい、変わりますね』

『シリル?』

「お兄ちゃん? 何で?」

『いやチェーンソーのデリバリーとついでにフリードマンのやつで』

「そうなんだ、え倒せた?」

『倒した倒した。聞いていい? とりあえず無事? 余裕はある?』

「全員無事、バスを影狼衆が飼い慣らしてる狼型の生物兵器にやられた。とりあえず奴らは近くにはいない」


『場所は』

「犬型の生物兵器たちの縄張りがあったんだけど」

『移動するからわからん』

「今給水施設がある森なんだけど」

『化物陸道の森とかいっぱいあるからな……』

『あるものなの?』

「運転手さん、地図ありますか」


 運転手と服運転手はしばらく手探りでポケットを探していたが、困った顔をして「見つからない」と言った。


 日が暮れる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る