第12話 生物兵器

 秋風ちえの乗るバスは人が住めない地域では比較的安全地帯と呼ばれる化物けもの陸道を進む。秋風はゆっくり走るバスの屋根に備え付けてあるデッキに出てコーヒーを飲んでいた。


「昨日話してたのはお友達?」

「はい、そうです」

「スピーカー壊れちゃったものね。でも夜にバンバカでっかい声で喋られると……」

「はい、すみません。気を付けます」

「近くのスポットで話せるといいね」


 バスは朝焼けの中を進んでいった。植物も生えず、禿げ上がった地表は岩がゴツゴツ露出した死の荒野であった。


 突然レーダーが激しく鳴り出して、皆が顔を上げた。その頃、運転手が面倒臭そうに散らかったビール缶やらタバコの吸い殻や諸々の書類の束やらをかき分けてレーダーのモニタを探していた。


「どこからなんですか?」


 正規のスタッフがはやる様子で運転手に聞いた。


「いやあ、よく誤作動を起こすんだよこいつは。接触が悪いのかなあ、多分今回もそうだと思うんだけど」

「そうでなかったら大変です。急いでください」


 結論から言うと来てた。レーダーが大量の生物兵器を探知していたのである。


「おいおいおいおい、楽しいことになったな」

「追い返してくれよ。あの人も呼んできてくれ」


 呼ばれた秋風は慌てて銃を撃つ準備をした。


「緊張してますか」

「久しぶりなので」

「落ち着いてやればまず問題ありませんよ。でも生きるか死ぬかだってことは忘れずに。私もあなたを守っている余裕はないから、最悪助けてあげられるか分からない」


 出発する当日。バスの中でスタッフの二人は簡単なミーティングを行っていた。


「使う弾は一般的な光熾こうし弾。直接当たれば大ダメージを与えられますが、あまりそこは意識しなくていいです。この弾丸は当たった対象物に関わりなく沸点もしくは発火点まで加熱する。木だろうと石だろうと一瞬で高温にしてさく裂させることができます」


 生物兵器に襲われた際のスタッフの仕事は相手の足元や近くにある障害物をさく裂させて相手をくじかせること。


「落ち着いて、十分引き付けて撃てば効果はあります。ある程度ダメージを与えれば引き返していきますよ」

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