第11話 バス

 秋風ちえが乗り込むバスは重装備で固められた装甲車で、六人分の個室があり、運転席は運転手と副運転手の仮眠室を兼ねている。車体には装備として連射式の銃が付いてる。弾薬を保管する場所とかもある。通常はスタッフが二人いるが、今回は体調が悪く一人が休んでいる。しかし秋風はスタッフのライセンスを持っていたので、安く乗せてもらう代わりに”仕事”を手伝う。


『バスはいつ出発するの?』

「5分前に出たよ。何日くらいかなあ、ぐっすり寝たらついてるといいな」

『そだね。通信はできるやつなんだね』

「うん、一番安全な化物けもの陸道でいくから虫が多いんだよね」


 宇宙人による地球上の生物の兵器化の副作用と言われているのが電磁羽虫である。簡単に言うとみんなが使っている通信機器に使われている電波を好んで食べる実体のない透過生物の一種である。簡単な通信手段だと電波が食べられてしまうので、周波数の高い音を大音量で流して殺虫しながら流すのである。ちなみに音が大きければ何でも死ぬ。


『なんでそんなややこしい設定……』


「ん? いまのホムンクルスの子の声?」

『ん? あごめん聞いてなかった。何?』

「だから……あっ」


 殺虫用のスピーカーの調子が悪いようである。


「あー! 聞こえるー??」

『うるさ。どしたん』

「あのねえ! スピーカーのお! 調子が悪くてえ! 大きい声でしゃべれば虫が死ぬから! しばらくこれでしゃべるね!」

『はいはい。ちょっとこっち音量下げるね』

「あ、うるさいですか。ごめんなさい」

『ん? 聞こえない』

「ごめんね! 隣の人にうるさいって言われたから! 切るね!」


 通話が切られた。


 嵐のような秋風に徒然とぜんはあっけに取られていた。

「は、はぁ……切れた……」

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