第一章 見習いは化け物に頭を食われる(完)+初稿とはなんぞや?

「そうだ――帰る前に」


 馳走の皿のほとんどが空になり、小さな子供たちがせっせと片付け、大の大人たちがそれを無視して帰ろうとしている中。ゼータは見習いのフェイに声をかける。


「何でしょう?」


 ――これ・・は、本当に俺の手に負えるのか?


 初めて配達を行い、モンスターに頭を食われ、歓迎会でも先輩たちに揉まれた彼の表情に疲れの色はない。そんな見習いに一抹の不安と恐怖を覚えながらも、ゼータも己の願望のために、彼に胸元から取り出した銃を渡す。


「忘れないうちに、これを渡しておく」


 差し出したのは一丁のハンドガン。

 新しいわけではない。といっても、きっちり手入れは施している。


「これは今日運んだレテ=マルザークの装備だった。種類は自動拳銃オートマチックベレッタ92。総弾倉数十五発。至ってよくある拳銃で、使い勝手も良好。手入れが少々面倒だが、とにかく連発して場を撹乱するのに最適な前衛……囮にはもってこいの銃だ」


 そのグリップ部分に刻印がしてある。女性のハイヒールを模した刻印は、まさに〈女王の靴レギーナ・スカルペ〉の証。


「おれに……銃をくれるんですか?」

「少なくとも、この二か月間はしっかり働いてもらうんだ。武器もなしに『何でもない場所』を歩かせるつもりはない」


 そう告げると、フェイが顔をあげた。若人らしい、キラキラした嬉しそうな顔。そんな彼に「試用期間でクビになれば、当然返却してもらうがな」と告げても、表情が曇ることはない。


 だから、副局長ゼータも口角をあげる。


「ようこそ〈女王の靴レギーナ・スカルペ〉へ――お前が壊れるまで、こき使い倒してやる!」


「……はいっ!」


【「女王の靴」の新米配達人 しあわせを運ぶ機械人形 第一章おしまい】




※以下、「あとがき」みたいなものです※


ここまでお読みいただきありがとうございました!

本作は表紙に書いた通り、4/10にカドカワBOOKS様から発売の『「女王の靴」の新米配達人 しあわせを運ぶ機械人形』の第一章の初稿でした。


今更ですが、初稿とはなんぞや? という方に。

ざっくり書籍化作業の流れですが、

①作者が1冊分の原稿を好きなように書く【初稿の作成】

②編集さんからご意見を頂戴して、直す【改稿の作成】

③ ②を何回か繰り返す

④編集さんに原稿を実物本のページ形式してもらう【組版の作成】

⑤文章のプロ(校正さん)に、文章や常識的におかしいところの指摘をもらう【校正案の作成】

⑥ ⑤でチェック入った部分を作者が確認&修正する【校正作業】

⑦ ⑤と⑥を数回繰り返す

⑧ 【最終稿】の完成!! あとは表紙や挿絵などにニヤニヤするだけ!!


と、こんな感じになっているのですが(新人作家のうろ覚え経験談です。微妙に単語が間違っていてもスルーしてください)、

今回の原稿は①の原稿でございます。

ただ今回の場合はコンテストで受賞した【中編(3万文字)】から【長編(おおよそ14万文字)】まで加筆……というか、ほぼゼロから書き下ろしたようなものですので、①の段階から作品全体に対して編集さんのご意見がたくさん入っています。


なので、ここから色んな人の手を借りて、実際に書店さんで発売される書籍ができあがったおります!もちろんイラストレーターさまの美麗な口絵(カラーイラスト)や挿絵も盛りだくさんなので、ここまでを楽しんでいただけた方なら、絶対に購入して損はないかと!!


カドカワBOOKS公式サイトのアドレスはこちらです

https://kadokawabooks.jp/product/joounokutsu/322211000370.html

このページに表紙イラストや特典情報も載っていますし、各電子書店さまへのリンクもありますので、ぜひご覧くださいませ!


そして本作は上記の通り、カクヨムで開催されたコンテストの受賞作がご縁でした。

こちらを読んでいる方の中には「将来商業デビューしたい!」「コンテストで受賞したい!」という方もいるかと思いますので、私が今回の受賞作を書くにあたり気を付けたことを次ページに書いてみようかと思います~

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